お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
●ライブドアショックから学ぼう
株式投資には、短期で売買して利益を上げる「小遣いかせぎスタンス」と、同じ銘柄をじっくり持って、長期で資産全体の利回りを上げる「資産づくり」スタンスがある。
「小遣いかせぎ」は派手で楽しいがリスクが高い。利益が上がると(自分で決めた)上限を超えて投資額を増やしてしまったり、普通の個人投資家が手を出すべきではない(と私が考える)「信用取引」に手を出してしまったりという大きな誘惑もある。今回のライブドアショックは、個別銘柄に投資する「株式投資」のリスクを、極端な形で私たちに再認識させてくれることになった。市場が公正でない、情報がゆがんでいる、チェック機能が働いていないというのは投資家にとって致命的なマイナスだが、現実の市場にはまだまだその要素がたくさん残っているということだ。
個別銘柄を買うときには、どんなに情報収集に力を注いでも幹部の不正、欠陥商品の販売、1従業員の失敗などで株価が大幅に下落したり、会社が倒産してしまうリスクがあることを覚えておこう。だからこそ投資金額の上限を決め、複数銘柄に投資し、信用取引に手を出さないというルールが大切なのだ。
実に個別銘柄の短期売買は多くの人が言うほど簡単ではない。時間が十分に取れないなど条件が整わない人もいるし、性格が向かない人もいる。何度かやってみて自分は向いていないと判断したら、無理に「小遣いかせぎスタンス」での株式投資を続けることはない。無理に続けると気が重いだけでなく損も深くなる。
●スタンスを変えれば株式投資も怖くない
一方「資産づくりスタンス」は地味で「小遣いかせぎ」のように楽しくもない。ポートフォリオを組んでこつこつと積み立てていき、ときどき全体のバランスを組み替える程度だ。あっちで「5割儲けた」「2倍に増えた」と騒いでいるのを横目でながめ、1割や2割に甘んじる時期も多い(とはいえ定期預金や個人向け国債にくらべると夢のような利回りだが)。1年で投資額が何倍にも増えることはないし、儲けで海外旅行に行くこともまずない。
だが5年10年20年という期間で見れば、かなり魅力的な利回りを達成できるはずだ。思いがけない下落相場でも痛手は小さい。ポートフォリオ投資(分散投資)が前提なので、日本の株だけでなく、海外の株や海外の債券も組み入れているからだ。日本の株価が半分に下がっても、資産全体ではプラスになる可能性だってある。
個別銘柄投資より投資信託での運用が主になるので、今回のライブドアショックのような出来事があっても受ける影響は小さい。
「資産づくり」のもうひとつの利点は、投資に時間がとられないことだ。自分の目的や相場観に合うポートフォリオ作りや、銘柄選び(主に投資信託)にはじっくり時間をかけるのがいいが、それさえ決めてしまえば日々の銘柄の価格を追うことはない。買値や買い時、売値や売り時を見計らう必要もない。自動積み立ての手続きをし、ときどき残高やバランスをチェックするだけで事足りる。ワクワクドキドキすることは、残念ながらあまりない。
これなら仕事に付き合いに忙しい会社員、家事や子育てに負われる主婦(夫)でも、無理なく投資を実践し長〜く続けることができる。株価が下がると眠れないという人も、投資信託の月1万円の積み立てから始めれば、1年後には眠れるようになるだろう。
「株式投資を始めたい」という人に勧めたいのは、こちら「資産作りスタンス」の投資だ。前回も話したように短期売買の「小遣いかせぎ」で成功するには、投資にかけられる時間がたっぷりあること、複数銘柄が買える資金があること、株式投資が好きでその過程も楽しめることなどの要素が欠かせない。条件がととのっていて性格的に向いている人はそうたくさんはいない。しかし「資産作り」は万人にできる投資法だし、万人(特に老後を公的年金に頼れない世代−20〜40代)に必要な投資法だ。
たとえば30歳から65歳まで35年間、毎年50万円を積み立てた場合、利回り1%なら65歳の元利合計は約2083万円。利回り4%なら約3682万円。7%なら6911万円だ。同じ努力でこれだけの差が出る。これぞ長期運用、複利、ポートフォリオ運用の成果だ。「資産づくりスタンス」で株式投資を取り入れることの意義は大きい。
これから投資を始める人は、ぜひ「資産づくりスタンス」を学んでひとつずつやってみてほしい。「小遣いかせぎスタンス」だけやってきた人も、将来のための貯蓄や毎月の積み立てで「資産づくり」をスタートさせてほしい。学ぶには、マネックスメールの本コーナーや毎週金曜日の「資産設計塾」が役に立つはずだ。
今始めたら1年後、株式投資に対するあなたの考え方も経験もまったく違うものとなっているはず。そしてきっと、あなたのポートフォリオもね。
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