お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
投資を始めたいと思っているのに、なかなか始められない人に。その原因と対策を考えている。
前回は「間違った先入観がじゃまをする」から間違った情報をデリートしよう。「新しい言葉、概念が思考をブロックする」から、わかっている人に易しく口頭で教えてもらおう。「完璧にわかってから始めようと」しないで、1万円から始めてみようということをお話した。今回はその続き。
4、わからないまま手を出して失敗してしまい、わからないままイヤになってしまった。
フィギュア・スケートや体操などで、難しい業に挑戦して失敗してしまったとき、すぐに同じ業をもう一度やって「できる」体験をしないと、恐怖が頭と体に染み付いてしまい、2度とその業ができなくなってしまうと聞く。
投資も似ている。失敗をして大損をした「恐さ」だけが体験として残ってしまうと、二度とそこには近づきたくなくなる。しかし、損をした「理由」や「原因」がわかれば恐さは薄れる。同じ失敗を繰り返さないための対策を立てて、実行することができるからだ。
バブルのときに株式投資で失敗して「もうこりごり」という元投資家は、証券会社の営業職員に勧められるままに売り買いをしていたケースが多い。だから儲かった理由も損した原因もいまだにわかっていない。営業職員が悪いとうらみ続けている人もいる。このままの考え方や態度で投資に再挑戦しても、いい結果は期待できない。
人まかせにしたり、よくわからないまま売買していたことを率直に反省しよう。あのとき損した原因をひとつでもふたつでも、冷静になってみつけよう。同じ失敗を繰り返さないためにどうしたらいいか、考えてみよう。
銘柄選びが間違っていたのか。買値が高すぎたのか。売るタイミングを逃してしまったのか。信用取引に手を出してしまったからか。投資にまわしてはいけないお金で株を買ってしまったのか。ひとつの銘柄に集中してしまったのか。エトセトラ・・
原因をしらべて、対策を考え、実行する。この基本的な「問題解決の手法」を投資にも応用しよう。この手法は人生のかなりのことに有効だ。失敗したからもう手を出さない、そこから逃げるという態度なら、恋愛もできないし仕事で成果をあげるのも結婚生活をつづけていくのも難しいよね。
5、矛盾する情報が交錯している
これは個人投資家の問題ではなく、情報の送り手の問題だ。
この前まで「いまどき、株式投資をやらないのは時代遅れ」とたきつけておきながら、株式市場にいろいろ問題が起こると「結局損をするのは浅はかな個人投資家」と、株式投資を見下げるコメントを乱発するマスコミ。まったく無責任だ。
投資に関する矛盾する、相反する情報はいたるところにあふれている。 「株は安く買って高く売ろう」vs「株式投資でタイミングをはかるのは難しい」「投資信託は手数料がかかるから損」vs「投資信託こそ資産運用の柱」
「外貨FXで1億円作りました」vs「素人はFXに手を出してはいけません」などなど
この業界にいてつくづく実感することだが、情報は送り手が「意図」「目的」を持って流している。証券会社が発する情報、雑誌が発する情報、新聞が発する情報、テレビが発する情報。情報そのものに間違いはなく中立に見えても、現場に立ち会うと、作り手送り手の意図が情報に織り込まれていくのをはっきりと見ることができる。意図というのは必ずしも商業的なことだったり、悪意があったりというわけではないけどね。
この情報を、無垢な消費者が真に受けるのかと思うと、時々恐ろしくなる。
これらの情報に混乱させられないようにするには、情報をスクリーニングすることだ。
スクリーニングの方法はいくつかある。ひとつめは、情報の送り手が誰か、どういう意図で情報を送っているのかということを考えてみるということ。
情報を受け取っていい最低限の条件は、送り手の「顔が見える」「信頼できる団体、個人である」「これまでの履歴・業績がわかっている」ことだ。 送り手が「その情報を流すことによって(正当でない)利益を得ない」かどうかもチェックしたい。
最近の雑誌は「広告企画」といって、記事と広告をタイアップさせたページのつくりが多い。マネー雑誌も例外ではない。記事の内容は中立でも、ページのつくりによって一定の商品や会社が優れているように思わせるのだ。注意したい。
二番め。すべての情報について「ホントかよ」という疑いの態度で接するのも有効だ。その情報と反対のことを言っている人や団体がいないかをチェックしてみよう。この商品・投資法は有利だという情報があれば、その同じ商品や投資法を否定している情報をあたってみるのだ。
両方の反する情報をチェックして、自分で考え、そして自分で結論を出す。 人間は、自分がほしい情報、好きな情報だけをキャッチしてしまう傾向がある。外貨預金をしようと思ったら「外貨預金はこんなに有利」、株式投資をしようと思ったら「5年で1億円つくった」的な情報だけを仕入れてしまいがち。あえて反対の価値観をみることで、冷静な判断がしやすくなる。
交錯する情報の中から正しいものを選び出す。これは投資やマネーに限らず、ますます重要になるテーマ。失敗してもへこまないで、少しずつ学んで賢くなっていこう。
投資を始めるのに二の足を踏んでいる人。始められない原因は思い当たっただろうか。解決の糸口は見えてきただろうか。
次回は、始められない原因の6番目、7番目「カリキュラムがととのっていない」「算数が苦手」を考えたい。
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