お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
<持ち株会ってどうなの?>
貯蓄上手になるには、天引き貯蓄を使いこなすことがひとつのポイント。今日は多くの会社が採用している「持ち株会」をみてみよう。
持ち株会は、給料天引きで、自分の会社の株式を一定額ずつ買っていく仕組みだ。積立額の単位や、申込の時期などは会社が独自に決めている。最低1000円/月くらいからできるところが多いようだ。会社によっては積立額に応じて一定の補助金が出ることもある。たとえば月1万円積み立てると1000円の補助金がついて1万1000円分買えるという具合。お得だ。ただしこの補助金も「福利厚生制度の一部」なので近年どんどん縮小されていて、昔はあったけれど今はない、というところが多い。まずは、自分の会社の制度はどうなっているか調べてみよう。
●少額で買え、購入手数料も口座管理料もかからない
そもそも、あなたがそこに入社したのは会社に「将来性がある」とにらんだからに違いない。会社に将来性があるなら、株価にも将来性、つまり値上がりする可能性があるということだ。その株式を1000円や5000円といった小さな単位で買えるのが、持ち株会の第一のメリットだ。
ふつう株は単元株という単位で取引される。株価が1株5000円で単元株が100株なら売買の単位は5000円×100株=50万円ということ。ところが持ち株会を利用すると、1000円分つまり5分の1株という小さい中途半端な単位で買えることになる。社員の特別待遇だ。これにもし補助金がつくなら・・見逃すのはかなりもったいない。
ふつう株は買うときに「購入手数料」がかかる。証券会社によっては「口座管理料」がかかるところもある。ところが持ち株会なら手数料はゼロ。その分実質の利回りがアップするということだ。うれしい。
●長期の定額積立で、ドルコスト平均法のパワーが
もうひとつ忘れてはならないのは、値動きのある商品を毎月一定金額購入すると、「ドル・コスト平均法」という投資手法が働くことだ。
株式投資の難しさのひとつは、買いや売りのタイミングをはからなければいけないというところにある。ところが持ち株会ならその苦労はない。定期的に一定額買うしくみなので、株価が安いときに多く高いときには少なく買うことになり、その結果、購入コストを引き下げることができ、いい利回りが達成できることになる。
まもなく定年を迎える団塊世代の人で入社当時から持ち株会を続けてきた人は、株価のピークからだいぶ下がったとはいえ、かなりの利回りを達成しているはずだ。
●換金しにくいのは難点でもあり長所でもある
前述のとおり、ふつう株式は「単位株」で売買される。なので単位株が100のところ、持ち株会で56株もってる分を売りたいといっても無理な話だ。売って現金化するには、コツコツ積み立てて単位株以上にする必要があり、売る場合はその単位で売ることになる。そうでなければ、持ち株会を退会して全額現金化ということに(ただし、会社によって制度は異なる)。
つまり、持ち株は、一般財形貯蓄のように貯まった額から必要なときに必要なだけ引き出すということができないということ。使いにくいといえば使いにくいが、その分、引き出さずに長く貯められるともいえる。ちょくちょく引き出す分は一般財形貯蓄などで貯め、なが〜く積み立てて大きく殖やしたいお金を持ち株会に積み立てるのがかしこい方法だ。
●ポシャったときの痛手は大きい
しかし、持ち株会には大きな欠点がある。今どんなに優秀で将来性の期待されている会社でも、今後経営不振におちいって株価が下がったり、倒産して株式の価値がなくなるリスクを持っている。そうなると高利回りどころではない。 日本でも一部上場の歴史ある大企業が倒産した例はいくつもある。一時的にまた長期的に経営不振になるのはめずらしくない。持ち株会には、会社が倒産して職を失い、自社株で積み立てたお金はゼロに・・という最悪のシナリオがあるのだ。業績不振なら、社員は様子を見て転職したり、持ち株会の積立をやめることもできる。しかし幹部の不正や事故であれよあれよという間に株が暴落し、会社も倒産してしまったら、冷静に対処する余裕などないだろう。 つまり、自分自身も自分のお金も同じ会社に投入するというのは、ハイリスク・ハイリターンの投資なのだ。
では、どうしたらいいだろう。
持ち株会で積み立てる額を、運用資金の全部でなく一部にとどめればいい。たとえば持ち株会に月1万円なら、月2万円を1万円ずつ2種類の株式投資信託でという具合だ。持ち株会が勝つか、インデックス・ファンドが勝つか、それとも選び抜いたアクティブ・ファンドが抜き去るか。将来に備えて運用の腕をみがくという意味でも、持ち株会一本にしぼらないのがお勧めだ。
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