50代で考えるマネープラン(4)

お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)

50代で考えるマネープラン(4)

40代から知っておけば鬼に金棒です。

○退職は株式投資のスタート?

 退職したら退職金を元手に株式投資をやって、悠々の老後を楽しもうと目論む50代は少なくないだろう。「今は忙しくて時間は取れないし投資するほどのお金もないが、退職したら数千万円が手に入るし時間もたっぷりできる。株で増やすぞ!」というわけ。

 だがちょっと待て。それはかなり危険だ。

 昨年からの株式市場の動きをみると、1年で4割上がったと思ったら、その後数ヶ月で2割近くも下げている。個別株ではこの数倍の幅で動いているものもある。1年で8割上がりその後4割下がったという具合。

 もし退職金の2000万円を、全部株式投資につぎ込んでいたらどうだろう。昨年1月に退職していれば1年後には約800万円のプラスだが、その後500万円の値下がり。ジェットコースターに乗っているような気分だろう。

 それでもまだプラスなら救われる。しかし最初の1年の成功に気をよくして、信用取引に手を出した後に相場が値下がりしていたら、当初のプラスを大きく上回るマイナスになっているかもしれない。

 では退職が今年1月で、その頃に2000万円を投資していたらどうだろう。おそらくすぐに300〜400万円の値下がりを経験することになる。あぁおそろしい。生きたここちがしないのではないか。

 以上はちょっと極端な例だが、ときどき聞く話でもある。逆に、いざ2000万円のお金を手にしたら投資するのが恐ろしくなって、全部を銀行の定期預金にしてしまったという話も聞く。

 いずれにしても、いきなり数千万、数百万単位のお金で投資を始めようとするのは、非常に危険で難しいのである。
 複数の投資商品を組み合わせてポートフォリオを組んだとしても、1ヶ月で5〜10%値段が動くのはめずらしくない。全部株なら2割3割の値下がりもある。1000万円投資して5%値下がりすれば50万円の損、10%なら100万円、30%なら300万円だ。現役時代に1ヶ月働いた金額より多いではないか!ふつうの人は(真面目な人ほど)これには耐えられないだろう。

 それに退職金を受け取ると、金融機関やわけのわからない業者からの「勧誘」がひっきりなしにくる。そんな状況で、自分で、冷静な判断をするのは難しい。投資経験がなければなおさら甘い話に乗せられやすい。甘いくらいならいいが、詐欺にあうこともある。

○ 今すぐ始めよう

 そこでいつもお勧めしているのは、退職前に「投資の経験」を積んでおくこと。つまり今すぐに投資を始めることだ。

 「リスクがなければリターンはない」とか「リスクとリターンの大きさは比例する」とか頭ではわかっていても、実際に経験しないと本当に自分のものにはならない。外貨FXや商品先物、信用取引で「許容できないリスク」「とってはいけないリスク」をとる人が後を立たないのは、リスクとリターンの関係が本当には理解できておらず「自分だけは大丈夫」と信じているからだ。
 本のタイトルではないが「10万円から始める」のが正解。10万円なら4割上がって4万円の利益、2割下がって2万円の損。うん、これくらいなら真面目な初心者でも耐えられるだろう。投資額を月10万円ずつ増やしていけば1年後には投資元本120万円、5年後に600万円の運用をしていることになり、2000万円への準備としては十分だ。

 こうやって退職金を手にする前に、何度か「損をする」「思い通りにならない」「後悔する」手痛い経験を積んでおこう。リスクとはどういうものか、いかに自分の自信や判断があてにならないか思い知ろう。
 そして経験から、自分にあった投資の配分や投資方法を見つけていく。
 情報収集の手段も今から身につけておきたい。退職して、会社や社会との間に大きな距離ができる前に。実際に投資を経験して初めて、有用な情報の集め方や勉強の仕方がわかってくるもの。そのノウハウは、もしかしたら退職金と同等の価値があるかもしれない。さあ、今すぐ始めてください。

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