分散型投信は運用の柱となるか?

お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)

分散型投信は運用の柱となるか?

■まず日本株からと勧めてきたが。

 50代は、いよいよ本格的に「運用」を始めるべき年代だ。これまで初心者の方には「まず日本株のインデックスファンドを、積立で買いましょう」とアドバイスしてきた。資本主義の前提は、経済の発展(≒株式相場の上昇)なので、もっとも情報が豊富な自国の株に投資するのがまっとうだと考えたからだ。
 まず日本株のインデックスを体験し、株式投資の感覚がわかってきてから、日本株のアクティブ型、外国株や外国債券を追加していきましょうと提案してきた。

 投資は「理解すること」と「シンプルであること」が大切だと確信しているが、上記の方法なら、誰でも少しずつ投資を始めて広げることができるからだ。 しかし、最近ちょっとポリシーがぐらついてきた。それは、いわゆる「分散投資型」という投資信託が登場し人気を呼んでいるからだ。特に50代、60代が販売のターゲットになっているようだ。

 分散投資型の口火を切ったのは郵便局が扱っている「世界6資産分散投信」だろう。日本国内と海外の債券、株式、リート(REIT)に投資するもので「成長」「安定」「分配」の3つのコースがある。コースによって、投資割合が異なっている。

 投資では、資産の種類と市場(地域)を分散する「分散投資」が必須だが、分散投資型ならこれひとつで、その理念が実現できる。楽ちんだ。手間がかからずシンプルだ。しかし、本当にいいことだらけだろうか。

■分散投資型の3つの欠点

 そうとも言えない。
 まずひとつめ。分散投資型の主流は分配型だ。これは高利回りの毎月分配で人気を博した外国債券ファンドの流れを組んだためだろう。しかし分配型は、毎月小遣いを受け取りたい年金生活者のような人以外には、使いにくいと考える。

 ふたつめ。資産に国内債券がふくまれている点だ。分散という観点からは、国内債券は悪くないが、ほとんどの人は十分すぎる預金や国内債券を持っている。ファンドで国内債券を買い増す必要はないだろう。おまけに購入手数料や信託報酬手数料はファンドの資産額全体にかかってくるので、国内債券の部分にもこれらがかかる。新発国債を買えばかからない手数料なので割に合わない。
 みっつめ。値動きが理解しにくい点だ。ファンドの基準価格が上がったとき、国内の株が上がったからなのか、為替が円安にふれて外貨建て資産の円建て価値が上がったためなのかわかりにくい(調べればわかるはずだが)。つまり、このファンドでは、株や為替の動きを体験するということが難しいのだ。
■投資の痛みは早く経験したい

 まあ、最初の2つの欠点はなんとか克服できる。
数は少ないが、分配型でないファンドを選べばよい。数は少ないが、国内債券が含まれてないファンドを選べばよい。
だが、3つめは難しい。

 投資を理解したり体験したりしなくても、分散投資で資産が比較的安全に、おだやかに成長してくれればいいと考える人なら、分散投資型の投資信託1本だけでいいのだろうか、、、。

 分散投資型でも、世界同時株安と円安が同時に起これば、基準価格は大きく下落する。分散投資だから安心、だから投資のことは考えなくてもいいというつもりでいたら、大変な目にあうだろう。
 投資は、なるべく早目に(軽く)痛い目を見て、怖さを知ってから取り組むのがいいと思う。分散型ではそのチャンスを逃してしまいそうだ。

 そこで現在の私の結論はこうだ。十分に選べば分散型投信もいいだろう。これを投資の柱とするのも、理にかなっている。しかしそれだけでは投資家として成長できない。やはり日本株、外国株、外国債券、リート(REIT)という個別のジャンルに投資する投資信託で、投資を経験したい。

 投資家のみなさん、分散型だけで満足しないでください!

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