お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
■1億円貯めたら老後の不安はなくなるか
最近、複数のマネー誌が「1億円つくる」「定年までに1億円貯める」という内容の特集を組んでいる。
確かに「1億円」というのはインパクトがある。数年前「20代でやっておくべきお金のこと」という単行本を出したが、その黄色い帯には「25歳で貯金ゼロでも、1億円貯められる!」と赤い字で刷ってあって、それに釣られて買ったという話も数人から聞いた。
できるなら1億円貯めてみたい!というのは、多くの人の共通の夢だ。確かに在職中に1億円の金融資産を持てる人は多くない。残高がいちばん多いときでも数千万円というのが、現実だろう。
だからこそ、1桁上の1億円貯めれば、退職後は悠々自適で、お金の心配などせずに過ごせるはずだと、考えても無理はない。
しかし実は、そうともいえない。
FPという仕事柄、1億円以上の金融資産を持つ人の相談を受けることもあるが、その人たちもお金の不安を持っている。退職時点の金融資産が3000万円の人も、1億円の人もあまり変わらない不安をかかえているのだ。
なぜだろう。
退職後にどうお金を使うかというプランがはっきりしていないからだ。1億円をこえる貯蓄を「万一にそなえるお金」として手をつけず、公的年金の範囲内で生活しているお年寄りも、めずらしくない。使うプランが描けていないと、1億円持っていても使えないし、不安は消えないのだ。
■不安を消すのはプランニング
「1億円あったら、税引き後4%で運用すれば、年400万円の利息収入が永遠に受け取れるじゃないか」という人もいるだろう。そのとおりだ。
しかし65歳時点で7000万円あれば、30年95歳まで、税引き後4%で運用するとともに元金をくずしていくと、約年400万円は確保できる。目的が「年400万円の年金」なら、1億円でなくて7000万円でOKなのだ。3000万円分は、必要ない努力だったということになる。
退職までにより多く貯めようとすると(運用利回りを上げる努力ももちろん必要だが)、今の収入からより多くを将来のために振り向けなければならない。その分、今の楽しみやゆとりを削ることになる。不要な金額のために犠牲を払うのはばかげている。
大切なのは、一桁多い金額を貯めることよりも、自分が思い描く生活を実現するために必要な額を試算して、その金額を貯めること。
そのためには、退職後にどう暮らすかから、どう使うかを考える。退職後の生活と今の生活とのバランスを図ることも欠かせない。
今、楽しくゆとりある生活を楽しみ、退職後もお金の不安なしで生活できる。いかにこのバランスをとるかが、退職後プランの醍醐味だ。
1億円にとらわれず、自分の生活から計算した金額を目標にしよう。
では、いったいどうやって目標額を決めたらいいか。次回考えてみたい。
中村芳子
ファイナンシャル・プランナー/アルファアンドアソシエイツ代表
http://www.al-pha.com/fp/
※本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、マネックス証券の意見ではありません。
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