お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
■1億円以下で安心する方法
前回は「退職のときに1億円もっていても安心できるわけではない」「安心するにはプランニングが鍵」「現在の生活と退職後の生活のバランスが大切」とお話した。
では、どうしたら安心できるだろうか。
第1のポイントは、予定外のことにそなえる貯蓄をリーズナブルな線に決めることだ。この貯蓄を私は「予備費」とか「緊急費」と呼んでいる。英語では「エマージェンシー・ファンド」。
1億円持っていても、1億円全部をエマージェンシー・ファンドと位置づけると、生活費や余暇費として使えないので、ゆとりある生活にはほど遠い(こういう人は安全なものにしか預けないし、わずかな利息にも手をつけない傾向がある)。
エマージェンシー・ファンドの妥当な額は生活費の1年〜2年分だと思う。
退職後の生活費は、大ざっぱに見積もると50代前半の半分程度。住宅ローンの返済がなくなり、子どもにかかるお金がなくなり、将来のための貯蓄の必要がなくなり、医療保険以外の生命保険料もいらなくなるからだ。
50代前半の手取り年収が700万円なら、退職後の生活費は年350万円程度。この1〜2年分だと、350〜700万円が妥当な予備費の額といえるだろう。
ちなみに現役時代の予備費は生活費3か月分くらいでいい。前出の例だと150万円ほどだろう。現役時代は予備費を使っても収入から補充することができるのでこのくらいで十分なのだ。しかし、退職後は収入が少なくなり補充がむずかしくなるので、その数倍ないと安心できなくなる。
ただ、予定外の出費に備えるのは貯蓄ばかりではない。入院にそなえて医療保険に入っておく、自動車保険や火災保険を十分手当てしておく、介護になったときの対策をたてておく、頼れるネットワークを作っておくなどで、予備費を膨らませずにすむ。これもプランニングのテクニックだ。
■利息や分配金だけで、生活費を補おうとしない
前回も話したが、利息や分配金だけで生活費を補おうとすると、かなり大きな元本が必要になる。
それよりも、年金保険や自動引き出し(解約)などを上手に利用して、元本の一部を取り崩しながら生活費にあてていくのが現実的だ。
取り崩し期間を65歳から30年と計算しておけば、ほとんどのケースで一生の生活費をカバーできるはず。高齢になるほど生活費はかからなくなるので、95歳まで計算しておけば105歳くらいまではカバーできるのではないかと考える。
年100万円を30年間受け取り続けるために必要な元本は以下のとおり。 元本取り崩し方式 利息のみ
2% 2240万円 5000万円
4% 1730万円 2500万円
6% 1380万円 1680万円
年200万円受け取りたいなら、上の数字を2倍にして計算する。
■ 運用利回りをほんの少し上げる
上の表からわかるように、年200万円の年金を受け取りたいとき、元本を取り崩さず利息だけを受け取る方式を選び、運用利回りが2%なら1億円必要だ。一方、元本取り崩し方式を選び4%で運用できれば3460万円で足りる。
ちょっとした違いで、1億円持っていても3460万円でも同じ結果=年200万円の年金、になるわけだ。
50代の(あるいは40代の)今から少しずつ運用の腕をみがき、プラス1%、プラス2%の運用ができるようになるのは、一生懸命1億円を貯めるよりも、ずっと意味のあることかもしれない。
それとやっぱり計算。自分でいろいろ計算してみる訓練が大切だ。それができれば、1億円未満でも、安心して悠々自適の生活が送れます。
中村芳子
ファイナンシャル・プランナー/アルファ アンド アソシエイツ代表
http://www.al-pha.com/fp/
※本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、マネックス証券の意見 ではありません。
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