投資をするなら、個別銘柄に投資をしたいと考える方も多いはず。
個別銘柄投資をするなら、知っておきたい、業種別アプローチの考え方を紹介します。業種別に見るべき視点や考え方などをご紹介します。
コラム執筆:『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』の著者 長谷部 翔太郎氏(現在は更新しておりません)
みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』の著者
の長谷部翔太郎です。第11回目の今回は、前回にご紹介した小売専門店と同じく消費関連として、スーパー・コンビニ業界を取り上げてみましょう。
この業界の特色は景気動向に対する安定性です。実際、景気が悪くなったからといって、スーバーやコンビニを利用しないではいられませんし、逆に景気がいいといって利用回数が何倍になるはずもありません。「どれだけお金を使うか」というのは景気連動ですが、日用品が基本のスーパー・コンビニでは大きな変動が起こり難いのが実情です。
もっと言えば、好況時は外食が増え、高級品嗜好が高まるためにスーパーの客足はむしろ遠のき、不況時は倹約のためにスーパーが賑わうという構造にあります。かつては積極的な出店戦略が成長ドライバーとなりましたが、既にスーパーやコンビニは全国津々浦々まで行き渡ってしまいました。波はあるが大コケも大化けもしない、という成熟期にあるのがこの業界と言えるでしょう。
そういった特性は株価でも顕著です。この業種の多くの株価は、概ねボックス圏での推移になっています。とすれば、投資戦略はボックス圏を意識しながらのトレーディングが柱となります。大化けする可能性のある企業を除き、長期保有戦略はそれほど有効なアプローチとは言えません。安値を拾い、上値も深追いせずにしっかり利益確定していくことが重要です。
概して、ボックス圏の上値に挑戦するときは、積極的な出店やショッピングセンター化の推進、自社ブランド品(PBブランド)の育成などといった試みが成長期待として織り込まれる局面であり、逆に下値局面はそれら試行錯誤の歪みが懸念されている時と言えます。急激な出店は売上増をもたらす一方、過大な財務負担を負うことになるうえ、海外からの安価な一次産品調達は商品の安全管理という難しい舵を切ることとも同義だからです。
PB商品も多くのスーパーが設定していますが、あまり切り替えを急ぎ過ぎてしまうと、やがて消費者から飽きられ、景気回復時には逆に「安物」的な印象となって敬遠されるリスクがあります(実際、90年代後半のPBはブーム一巡後に雲散霧消してしまいました)。成長への経営努力とそれへの懸念の綱引き状態が株価のボックス圏を形成しているのです。
その中で、コンビニが通常の小売と異なった進化を見せている点は要注目です。元々、コンビニは各店舗から得るフランチャイズ使用料を収益の源泉としている点が特徴的でした。しかし、近年はその豊富な店舗数、深夜営業などから、商品の売れ筋を把握する重要なツールとなりつつあります。また料金収納代行サービスや銀行ATMなどの利用も増え、「社会インフラ」としても機能し始めました。東日本大震災でも被災者のサポート拠点として存在感を発揮しました。店舗数は既に飽和状態にありますが、こういったコンビニの進化は大化けする余地がまだ残っていることを示しています。
特に商社はそういった情報収集能力、集金・集客能力に着目してきており、現在は多くのコンビニが商社の傘下に再編されています。たとえば、業界2位のローソンは三菱商事傘下(出資比率32%)、業界3位のファミリーマートは伊藤忠商事傘下(出資比率31%)といった具合です(業界1位のセブンイレブンは、セブン&アイ・ホールディングス傘下)。進化がさらに進めば、もう一段の再編が起こる可能性は十分あります。
なお、スーパー・コンビニ業界の株価を見る際には、PERやPBRといったバリュエーションに注目してください。業績の安定した業界であるため、こういった指標が額面通り活用できるためです。ボックス圏でのトレーティング投資戦略とは、バリュエーションに力点を置いたバリュー戦略に実は他ならないのですから。地域によっては株主優待へのチェックもお忘れなく!
コラム執筆:
長谷部 翔太郎
証券アナリスト。日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Instititional Investors 誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開。著書は、
『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を知っている』
『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』その他多数
マネックスからのご留意事項
「業種別アプローチで極める、銘柄選び」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。