第 12 回 不動産セクター、トレンドの捉え方

投資をするなら、個別銘柄に投資をしたいと考える方も多いはず。
個別銘柄投資をするなら、知っておきたい、業種別アプローチの考え方を紹介します。業種別に見るべき視点や考え方などをご紹介します。
コラム執筆:『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』の著者 長谷部 翔太郎氏(現在は更新しておりません)

第 12 回 不動産セクター、トレンドの捉え方

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』の著者
の長谷部翔太郎です。第12回目の今回は、不動産を取り上げてみましょう。不動産で重要なのは、あまり印象がないかもしれませんが、不動産は実は金融商品の一種でもあるという事実です。今回はそこからお話しを始めたいと思います。

不動産では「利回り」という概念がカギになります。「キャップレート」という言葉を聞かれた方も多いと思いますが、これが不動産利回りに相当します。年間賃料収入を不動産価格で割ったもので、賃料収入で得るべき期待利回りを設定すれば、自動的に不動産の理論価格が決まる仕組みです。割り算になるため、期待利回りが低いほど不動産価格は高くなります。つまり、低めのキャップレートが許容される時が不動産市況上昇局面となります。一つとして同じものがない不動産も、この利回りによって価格動向を掴むことが可能なのです。

そして、利回りがある以上、比較もできます。具体的には、株式の配当利回りや銀行預金金利との比較が可能になるということです。現在、預金金利は1%以下、配当利回りは2%です。一方、キャップレートは6%程度もあるため、不動産は非常に魅力的な運用先となっています。しかし、元本減少リスクのない預金や流動性の高い株式と比較すると、不動産は地価下落リスクや相対取引故の低い流動性といったハンデがあります。そのため、そもそも高い利回りが設定されて然るべきとも言えます。そこで、この利回りの差が注目されるのです。

例えば、リーマンショック前に不動産投資ファンドなどが一世を風靡した2007年頃、キャップレートは3%台でした。これに対し、配当利回りや預金金利は現在とほぼ変わらない状況でした。当時の不動産市況が如何に好調だったか、そして、当時は不動産のハンデが如何に楽観的に見積もられていたか、がわかります。この低いキャップレートは、既に不動産価格がかなり高値である状況を示唆しており、将来はさらなる価格上昇があることを前提にしなければ説明のつかない水準でした。これが現在は地価下落によって大幅に修正されています。不動産動向を見極めるためには、こういった他の金融商品との比較が非常に参考になるのです。

さて、本題の投資戦略です。不動産株は、当然ながら「不動産価格動向」と高い相関性を持ちます。そのためにも、新聞の折り込み広告やインターネットで投資用不動産の利回りをウォッチしてみてください。もちろん、似たような条件のものをある程度の時間をかけてご覧になっていただければ、大体のトレンドは掴めます。それを活用しての順張り戦略が有効となります。短期的な業績動向とは一見関係ない動きをするので注意が必要です。これは、地価の変動が賃料相場や実際の売買に波及するのにタイムラグがあるうえ、大規模開発などがあれば、その竣工時期によっても業績が左右されてしまうからです。

また、不動産価格も株価も「行き過ぎる」傾向にあることも重要です。70年代の日本列島改造ブームや80年代のバブル、最近はサブプライムバブルという状況がありました。これは、相対取引による価格の不透明性に加え、流動性のなさがボラティリティを増幅させるためです。だからこそバブルが発生しやすく、波に乗った順張り投資戦略が機能するのです。しかし、何事も程々が大事。相場格言で「頭と尻尾はくれてやれ」ともいいます。「尻尾までは追わないぞ」という冷静な判断が必要なことも覚えておいてください。


コラム執筆:
長谷部 翔太郎
証券アナリスト。日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Instititional Investors 誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開。著書は、

『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を知っている』

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