第 14 回 アノ業種は、好転すると どうして一気に上昇するのか?

投資をするなら、個別銘柄に投資をしたいと考える方も多いはず。
個別銘柄投資をするなら、知っておきたい、業種別アプローチの考え方を紹介します。業種別に見るべき視点や考え方などをご紹介します。
コラム執筆:『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』の著者 長谷部 翔太郎氏(現在は更新しておりません)

第 14 回 アノ業種は、好転すると どうして一気に上昇するのか?

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』の著者
の長谷部翔太郎です。強烈な円高、米国債の格付け引き下げ、欧州の財政不安台頭などを受け、株式市場はかなり荒い展開となっています。そこで第14回目の今回は、その影響を大きく受ける金融(銀行)業界を取り上げてみましょう。

そもそも銀行株は典型的な景気敏感株という位置付けにあります。景気拡大時には、金利、資金需要、株式市場動向といった業績を左右する3要因のすべてが望ましい方向に動くためです。景気拡大時には金利が上昇しますが、これは貸出金などの資金運用利回りの上昇となって銀行業績を拡大させます。同時に、企業や家計からの資金需要が強まり、金利収入の源となる貸出残高が増加。不良債権も減少し、これらがまた業績拡大要因となるのです。さらに、高金利への警戒感が出るまでは株式市場も上昇する傾向が高いため、保有株式の価値増大を受けて銀行の純資産価値も増加します。つまり、景気拡大は銀行にとって良いこと尽くしなのです。

しかも、これらは同時に作用するため、相乗効果も生まれます。レバレッジ(テコ)が効いて「高ベータ株(株式市場全体の変動率に連動しながらも、レバレッジによりその変動率以上に株価が変動するもの)」になるのです。とすれば、銀行株への投資戦略は逆張りが基本となります。金利が低く、資金需要も弱くて不良債権が大量に発生し、保有株式の価値も低い景気のボトム時が投資のチャンスとなるのです。

もちろん、景気のボトムはその時にはなかなかわかるものではありませんので、過去のPBR(株価純資産倍率)などを見ながら、ある程度まで下がった局面では割り切って仕込んでいく戦略が必要でしょう。当然、景気がピークに近づいたところでは、あまり上値を追わず、しっかりと利益を確定させることが重要です。

さはさりながら、現在の銀行株の株価決定要因として注目されている不良債権処理については注意が必要です。リーマンショック後の大幅調整からは定石通りにいち早く株価は上昇したものの、その後は自己資本規制強化(バーゼル3など)の流れを懸念してむしろ大きく売り叩かれました。銀行株の投資には、定石をきちんと頭に入れながらも、その時々の政治・経済情勢に合ったテーマに注意しておく必要があります。

また、近年特に銀行株で撹乱要因となっているのは「増資の実施」です。以前から、国際的に業務展開する金融機関は厳しい財務規制が設定されていましたが、リーマンショック以降は世界金融不安の再発を防ぐために、より厳しいルールを課される流れにあります。

しかし、邦銀は普通株による資本のウエイトが欧米のグローバルバンクと比較して高くなく、保有株式の含み益の資本算入でようやく規制を達成できているため、規制強化や株価下落があれば、その状況に不都合が生じかねないのです。そこで、そういった懸念が出てくるたびに、増資観測が市場に台頭することになります。増資は一株当たり利益の希薄化を招くため、当然、株価の下落要因です。

ただ、矛盾するようですが、このような局面は銀行株の買い時であるのも事実です。株価は増資観測の段階でそれを織り込み始めるため、増資が発表された時は経験的に悪材料の出尽くしとなるからです。もちろん、増資が不十分との見方となればその限りではありませんが。

そして現在、銀行株はまだ波乱の中にあります。これは欧米の財政不安と、それに伴う金融不安が波及してきているためです。それは単に保有外債の評価損懸念のみならず、世界経済の停滞長期化懸念、また、そういったマクロ要因を背景としたグローバルバンクの経営不安懸念にまで繋がっているようにも思えます。定石通りの相場展開に回帰するには、少なくともこれらに解決の糸口が見えてくる必要があるでしょう。


コラム執筆:
長谷部 翔太郎
証券アナリスト。
日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Instititional Investors 誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開。著書は、

『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を知っている』

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