投資をするなら、個別銘柄に投資をしたいと考える方も多いはず。
個別銘柄投資をするなら、知っておきたい、業種別アプローチの考え方を紹介します。業種別に見るべき視点や考え方などをご紹介します。
コラム執筆:『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』の著者 長谷部 翔太郎氏(現在は更新しておりません)
みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』の著者
の長谷部翔太郎です。為替、株式と金融市場は不安定な展開が続いています。特に直近の大幅な円高は、今後の実体経済への影響が非常に懸念されています。そこで第15回目の今回は、少し趣向を変え、円高局面で注目すべき業種というものを取り上げてみましょう。
定石として考えられるのは、(原材料輸入などで)円高メリットを受ける輸入産業、そして販売に為替の影響を受けない国内産業となるでしょう。具体的には、食品業界、建設・不動産業界、紙・パルプ業界、などが有名なところでしょう。これらは既に多くのメディアなどでも言及されているところです。では実際、株価は円高局面で高パフォーマンスにあるのでしょうか。
答えはノーです。もちろん、短期的には上昇局面もあるのですが、半年単位のトレンドで見れば決してそうなってはいません。現実には円高メリット以上に、円高による景気悪化・海外生産シフトなどにより、内需そのものが停滞してしまうためです。かつての1985年からの円高では金利低下が内需を刺激したため、輸出産業ですら内需で潤うほど、ほぼ全産業が絶好調となり、バブルまで生まれました。しかし、現在はバブルの後遺症もあって内需は結局刺激されず、むしろ輸出産業の受ける打撃が内需を冷やす構造になっているのです。
振り返ると、過去20年で円は対ドルでおよそ倍に上昇しています(150円から76円)。上昇局面は大きく4回ありました。90~95年、98~2000年、2002~05年、そして2007年以降現在まで、です。このうち、2002~05年のみがかなり定石に近い展開となりました。これは不良債権処理の進展などから内需回復の芽が出てきたためです。中国などアジア景気の拡大も追い風となりました。
しかし、それ以前の2回で堅調なパフォーマンスを示したのは医薬品やサービスといった業種にとどまります。特に90~95年は円高以前の問題としてバブル崩壊の影響が大きく、濃淡はあれ、どの業種も下落を余儀なくされました。内需の拡大がない限り、円高イコール輸入・内需産業の活況という構図は実は機能していないのです。
今回もほぼ全業種が下落しており、欧米の財政不安といった経済状況は90~95年当時と酷似しています。短期的なトレーディングはさておき、定石に則った投資戦略はあまり有効でないと考えます。震災復興が内需拡大の呼び水となって定石に回帰する可能性はありますが、楽観的な見方は取りづらいでしょう。むしろ、現在考えるべきは為替が落ち着いてきた後の展開への布石です。特に、構造変化が進展しているにもかかわらず、円高相場で連れ安している業種、あるいは円高によって構造変化が加速されるような業界は要注目です。
ここでは具体例として、連れ安業界として情報通信、構造変化の加速期待として医薬品、食品、の計3業種を挙げます。情報通信はSNSの拡大や震災以降の在宅勤務の浸透にスマートフォンの普及がリンクしたことで、ライフスタイルの変化を実現する重要ツールとなりつつあります。為替が落ち着けば、この変化が再評価される可能性が十分あると考えます。当然、インターネットや通信ゲームを含むソフトがより注目されるはずです。また、食品・医薬品を注目するのはM&Aへの期待です。本コラムでも以前書きましたが、この両業種は海外ブランドを取り込んでいく必要に迫られています。
円高は海外企業の買収には絶好の追い風となります。従来の定石のように、円高による期間利益の増大といった貢献ではなく、事業構造そのものを大きく変えるという点で大きく期待できるはずです。
コラム執筆:
長谷部 翔太郎
証券アナリスト。
日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Instititional Investors 誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開。著書は、
『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を知っている』
『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』その他多数
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