第 16 回 テーマが大きくなればなるほど、先行メリットを享受するこの業界

投資をするなら、個別銘柄に投資をしたいと考える方も多いはず。
個別銘柄投資をするなら、知っておきたい、業種別アプローチの考え方を紹介します。業種別に見るべき視点や考え方などをご紹介します。
コラム執筆:『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』の著者 長谷部 翔太郎氏(現在は更新しておりません)

第 16 回 テーマが大きくなればなるほど、先行メリットを享受するこの業界

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』の著者の長谷部翔太郎です。金融市場は依然として落ち着きのない展開が続いており、なかなか投資チャンスに巡り会えないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。そこで第16回目の今回は、より長期的なスタンスが重要な総合商社を取り上げてみましょう。

広範囲な商品を取り扱う総合商社は、その巨大な売上規模からもわかる通り、日本経済との相関性は非常に高く、総論としては景気敏感株に位置づけられます。しかし、たくさんの商品を抱えるが故にインパクトは分散されてしまうため、景気敏感株としてのパフォーマンスは実は冴えず、投資魅力度が高いとは決して言えません。むしろ商社株が賑わうのは、その時々で様々なテーマが相場の軸となった時という傾向が強いのです。

過去を見ても、2005~2008年は「新興国」「資源」といったテーマで商社株が大いに賑わいました。現在も商社は強力な資源会社として認識されているくらいです。また、1999~2001年ではIT(情報技術)がテーマとなって商社株が注目され、さらにその前のバブル期には財テクをキーワードに商社が物色されました。これらはいずれも市場全体の大きな柱となったものであり、当時の経済情勢、国際情勢、世相、技術などに大きな構造変化をもたらすようなテーマでした。こういった構造的変化に敏感に反応してきたのが商社株なのです。

これは1980年代後半以降、商社が伝統的な卸売業から事業投資にビジネススタイルを大きく変化させたためです。IT関連にせよ天然資源にせよ、それらへの事業投資はブームになる前に着手されていました。そして、そういった先行投資に時代が追いついた頃には、既にその分野では一日の長があった商社への期待値が高まる(株価が上昇する)といった構造ができあがっていたのです。実際、商社の持つ情報、資金力、信用力があれば、現場の最先端情報を元に成長余地が大きいと判断された様々な分野で、思い切った布石を先行投資として打つことができます。総合商社は今や一種のベンチャーキャピタルの集合体であり、時代が追いつけば開花する投資事業を多数抱えているのです。先ほどのテーマは、その中からの典型的な大化け例とも言えるでしょう。テーマが大きくなればなるほど、先行メリットを受ける可能性が大きい商社は、テーマに乗った投資戦略が有効と考えられるのです。

ただし、そんな大きなテーマが簡単に出てくる訳はありません。また、今は順調な事業でも、その構造変化が一巡してしまえば、今度は次の成長の牽引役が見当たらない、ということにもなりかねません。つまり、一つの投資が成功すればするほど、その次のステップへの不安が募るというジレンマを招くのも確かなのです。

その結果、直近の商社株のPERやPBRは非常に低い水準を余儀なくされています。これこそ、現在の資源投資の成功以上に、資源価格の高騰や新興国の急成長という追い風がこの先何年間継続するかわからない、次なるテーマも出てくるかわからない、という不安を織り込んできているため、と理解するべきでしょう。しかし、大きな構造転換は必ず起こります。例えば、農漁業、環境(エネルギー)といった分野は極めて重要なテーマになるのではないでしょうか。他にもまだまだ需要なテーマは埋もれているはずです。長期スタンスでの商社株は注目してよいかもしれません。

※ 当コラムは、9月30日をもって連載終了となります。10月1日以降、マネックスメールにて切り口を変えて、グローバル企業を比較するコラムを連載開始いたしますので、ご期待ください。

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