「ヘッジファンド投資のプロセス (2) アクセス」

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

「ヘッジファンド投資のプロセス (2) アクセス」

 さて、有望なヘッジファンドが存在するということが判明しても、実際にそれをいつでも「買える」ということではありません。これが個人投資家に一般的に知られているファンド、「投資信託」のような商品とは違う点です。
 ヘッジファンドの本来の収益源は、投資信託のようにファンド規模から稼ぐ手数料ではなく、運用成果から稼ぐ成功報酬です。最近では特に有望なヘッジファンドこそ、自分たちの運用効率性を高いレベルに保つためにファンドのサイズを制限し、あらたな投資資金を受け入れることを拒否します。このようなヘッジファンドは「クローズド」(closed)していると言います。

 ヘッジファンドが立ち上がってから間もないのであれば、新規投資家を受け入れる「オープン」(open)の状態がほとんどでしょう。その新しいファンドが有望である可能性があったとしても、実績を「様子を見ている」投資家が多いからです。ただ、近年では早めにファンドをクローズドできるということは、そのファンドが有望であるという勲章みたいなものになっています。

 ただ、ファンドをクローズするかはマネジャーの判断によります。そのヘッジファンドの運用戦略によっては市場規模がそれほど大きくないものもありますし、何よりもマネジャーの運用、リスクマネジメントおよびビジネスの哲学を反映しています。

 90年代後半ぐらいまでは、有望なファンドであっても半永久的に「オープン」していましたが、近年はその状態はガラリと変わりました。「売れっ子マネジャー」が独立やスピンオフなどで新しいファンドを設立して「オープン」した同日に応募倍率が何倍で即時「クローズド」してしまうケースも時々見られます。

 ヘッジファンドが自らクローズドするというきっかけは98年〜00年ぐらいに大手ヘッジファンドの運用資金が大きくなりすぎて運用に失敗したという経験からです。この時代にはLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の破綻、タイガーマネジメントも業務停止しています。大きいということは、ヘッジファンドにとっては必ずしも良いことではなかったという教訓になりました。

 正確にいうとクローズドでも、「ハード」と「ソフト」があります。ハード・クローズドの場合は、どの投資家からでも例外なく投資資金を受け入れないことです。一方、ソフト・クローズドの場合は、投資家や条件によっては投資資金を受け入れるということです。例えば、何かの理由で既存の投資家がファンドの持分を償還した場合に、別の新しい投資家が入られることも含みます。
 このようなソフト・クローズドしているファンドに優先的なポジションを得ようとすることは、実はヘッジファンド投資家のプロの重要な仕事です。ファンドを見つけるだけではなく、実際に投資できるアクセスです。

 どのように投資家はこのようなアクセスを得るか?決して投資資金の規模ではありません。返って投資資金が大きすぎることがマイナス要因になり得ることがヘッジファンド世界の常識です。

 アクセスの鍵は、やはり前回にご紹介したように長年の経験と人の信頼ネットワークを築いていることです。投資家もマネジャーから信頼してもらって、相互的なリレーションシップ(良い関係)を築くことが、良い投資機会につながる訳です。

マネックスからのご留意事項

「オルタナティブのランダム・トーク」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧