ヘッジファンド投資のプロセス (3) 定量分析 リターンの見方

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

ヘッジファンド投資のプロセス (3) 定量分析 リターンの見方

 ヘッジファンドの運用成果の情報開示を毎週要求する機関投資家は増えてきましたが、ヘッジファンドの運用実績を判断するには月次のNAV(Net Asset Value: 純資産価値)のデータにより判断する場合が多いです。月毎のNAVの増減比率が月次リターンになります。

 1月から12月の月次リターンのデータ・シリーズが並び、その横に年のリターンが表示されるのが通常パターンですが、日本の機関投資家向けの場合は4月から翌年の3月の年度ベースで表示される場合もあります。

 ファンドが設立されたときからの収益率(return since inception)を表示することもありますが、年率化した平均収益率(annualized average return)が表示されることもあります。例えば、私が以前勤めていたムーア・キャピタルの親方的ファンドであるMoore Globalは、1990年1月から現在までのannualized average returnは23.6%です。これは、設立された時点から2380%上昇したことになります。良いですねぇ。。。

 ただ、仮に年率リターンが24%であっても、1年に毎月、一律に2%上昇したわけではありません。もちろん儲かった月もあれば、損をした月もあります。
 戦略スタイルは運用者によりますが、月次のリターンに目を通してみると、月間が固まって収益をあげるようなヘッジファンドのリターンもありますが、これは「ランピー」lumpy(こぶのような)リターンと言います。

 価格リターンの月次変動のことを「リスク」と定義します。この価格変動は具体的に月次のリターンの標準偏差を年率化した数値を示すことが通常です。標準偏差は、データ(この場合は月次リターン)の全体の結果が平均のところからどれくらいまとまっているか散らばっているかバラツキを表す指標ですね。
 例えば、Moore Globalの1990年1月から現在までの年率標準偏差は 12.6%ですが、この意味は、過去の統計上、期待できる年率リターンはほとんどの場合、年率化平均リターンの24.6%±12.6%に収まるということです。悪くても年間12%ぐらいのリターンを期待できるし、良ければ37.2%の年間リターンを手に入れることができるかもしれません。

 ただ、これは「予測」リターンという意味ではありません。過去のデータは、過去の運用環境によって生じた成果ですが、将来は同じような環境の中で運用できると限りません。要するに統計は、車のバックミラーで見える道路と思ってください。バックミラーだけで運転をしたくはないですよね。

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