シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)
前回は、「リスク」の定義とは、月次リターンの標準偏差を年率化した数値であるということを紹介しました。標準偏差とは、月次リターンの全体の結果(入力データ)が全体の平均値からどれくらいのバラツキを表すかということを示す指標です。
このように標準偏差をリスク数値として使うことは運用業界のひとつの習慣ですが、これだけでは必ずしも価格リスクを正確に測れない場合が実は少なくありません。
標準偏差というものの大前提は、観測するデータが「正規分布」で表すことができるということです。英語ではbell-shaped curve(鐘の形)と言いますが、データが平均値の上下に固まっていて、平均値から上下遠くなるほど観測数が減っていくというきれいな正な平方な形です。
ただ、これは理想像に過ぎません。ヘッジファンドの多くの場合は、平均リターン値から遠いところでデータが観測できます。これは、英語ではFat-Tailと言います。例えば、平均月次リターンが1.00%で、ほとんどの場合、月次リターンが-1.00%〜3.00%の範囲であるのに、時々、突発的に7%、10%が出てしまうというようなリターン・プロフィールです。
これがプラスの7%、10%であれば別に文句はありません。ただ、これがマイナスの場合では、いくら長い目で見た平均値がプラスであっても、たまったものではありません。
従って、標準偏差という数値だけではなく、下方リスクを考慮するような偏差値も参考にすると良いでしょう。「損失標準偏差:Loss Standard Deviation」はマイナスのリターンを入力データとして平均のマイナス・リターンとのバラツキを数値化します。一方、「下方偏差:Downside Deviation」の場合は、マイナス・リターンの平均値ではなく、容認できるリターン(例えば10%)より低いリターンを入力データとします。
一方、アップサイドのリターン幅が大きい優秀なファンドでは、データが上方にブレますので、標準偏差という統計上の数値は上昇してしまいますが、このようなバラツキは大歓迎ですね。これは、「リスク」が上昇したとは言えないでしょう。
そして忘れてはならないことは観測できるデータ数です。これが少ない場合に、標準偏差が低いからリスクは低いとは言えませんね。たまたま温和な市場環境で観測した短期期間のデータであったかもしれませんので。データの背景もしっかりと見極めながら、リスク数値の有効性や限界も考えることも必要です。
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