シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)
さて、4回に渡ってヘッジファンドの実績を検証する定量分析の代表的な例を紹介しましたが、今回は定性分析へ話をシフトします。定量分析と定性分析はバランス良く両方とも必要なものなのですが、面白いことにヘッジファンド投資に関わる人の思想によってどちらかを重視する傾向が見えます。
定量分析派は、「数字」という事実を基に理論的かつ客観的に判断することが王道であり、定性分析は根拠が少ない主観的なものなので、定量分析に残る隙間を埋めるものであると考えます。
一方、定性分析派は、定量分析は莫大な数のヘッジファンドのスクリーニング(初期選別)をするツールとして活用できるが、主なる判断事項は実際にお金を運用する生の人物を見ることだと考えます。
私自身は、定量分析は必要なものであると思いますが、そこから浮き上がる「事実」の背景や環境を考慮することは重要だと思っています。実績を定量的に眺めると、安心感が沸く気持ちはわかりますが、これをやみくもな過信でヘッジファンドに投資すると「リターンを追いかける」罠に引っかかる可能性があります。要は、良いリターンが形成されたファンドを見つけましたが、投資した瞬間からはしごを外されたようにリターンのパターンが崩れていくことです。
言い換えると、これはヘッジファンド投資版の「モメンタム投資」です。ということでれっきとした投資手法のひとつであることは確かですが、そういう意味ではヘッジファンド投資版の「バリュー投資」があっても良いですね。
しかし、どのように「割安」のヘッジファンドを発掘できるのか。ヘッジファンドにはPBRやPERのような株式のバリュー投資に活用する数値は当てはまりませんが、リスクに対するリターンの良い非対称性の数値は使えるでしょう。ただ、発足まもないヘッジファンドにはデータポイントが少なく、統計的にそれほど意味があるとはいえないところが問題です。
ただ、後から言えることは、多くの場合、最も高いパフォーマンスをヘッジファンドが稼ぐのは発足してからの初期段階であるということです。「化ける」割安のヘッジファンドを定量分析で発掘することでは難しいということでしょう。
ヘッジファンドは、株式や債券の「代替」と言われていますが、「商品」ではないです。あくまでも、運用を委託する「人」です。しかも、その人の過去の実績に対して報酬を支給するのではなく、これからの可能性を計るには、やはり定性的判断が大切であると思います。
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