ヘッジファンド投資のプロセス (8) 定性分析 人を見る

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

ヘッジファンド投資のプロセス (8) 定性分析 人を見る

 投資判断の時前調査であるデューデリジェンス(Due Diligence)は一言でいうと、候補に挙がっているヘッジファンドマネジャーは果たして信頼できるかということを前以てしっかりと調べることです。もちろん、実績は一つの判断材料でありますが、過去の実績から投資家は収益を上げることはできませんので、あくまでも将来の収益の可能性の判断が必要です。

 要は、実績だけではなく、運用戦略や商品設計だけではなく、人を見るということです。この人の「エッジ」、有為性は何か?これは、ヘッジファンド・マネジャー採用の際に特有な判断ではなく、ビジネス全般に共有することです。
 明治時代実業家の渋沢栄一の『人物の観察法』という論説でこのようなことを言っています。「初めてお会いしたその時に、この方は大抵こんな方だなと思った感じには、いろいろの理窟や情実が混ぜぬから、至極純なところもあるもので、その方がもし偽り飾っておらるれば、その偽り飾っておらるる所が、所見の時にはチャンと当方の胸の鏡に映ってありありと見えることになる。」
 やはり、第一印象ということは重要です。長年、多くのマネジャー面談を繰り返すと感性で感じ取られるものがあります。これは主観的なものであり、もちろん間違いもありますが、その為にもやはり定性分析には経験則が必要です。
 栄一はこんなことも言っています。「行為と動機と満足する点との三拍子が揃って正しくなければその人は徹頭徹尾永遠まで正しい人であると言いかねるのである。」これも結構、マネジャーの定性分析に適用できます。

 「行為」ということは、その人が例えば他の人たちにどのように接するということが含まれていますが、その意味ではレファレンスは需要です。マネジャーが出すレファレンスをチェックすることはもちろん、出さないレファレンスも彼が以前に勤めていた会社の同僚や取引先、投資家、同業者(他のヘッジファンドマネジャー)からチェックするべきです。そして、現在、彼が雇っているスタッフの目から見た人物像も参考にすることは重要です。

 「動機」という面では、何故この人物が雇い人という安定した生活からあえて独立という不安定な生活を選択し、ヘッジファンドを立ち上げたかということは是非、見てみたいものです。もちろん、それは単純に言うと金儲けでありますが、単に早く儲けて退場したいと思っているのか、それとも実際に長期的に金融サービスというビジネスを運営したいのか。現在の動機レベルは、過去と比べて変わっているのかを計りたいです。

 そういう意味では「満足」の面を把握することは重要です。その人物が満足するような仕事はどのようなものなのか。ボラティリティを抑えてそこそこのリターンを上げることに満足するのか。若しくはボラティリティのリスクは取っても良いが高いリターンを得ようとするのか。そして、いくら有望と言われているマネジャーでも自分に満足しすぎている危険信号はないか。英語ではhubris(傲慢)と言いますが、破綻したヘッジファンドの根源のほとんどはこの理由でしょう。

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