ヘッジファンド投資のプロセス (10) アロケーション

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

ヘッジファンド投資のプロセス (10) アロケーション

 さて、定量分析・定性分析の結果、素晴らしいヘッジファンドを発掘できたとしても、そのたったひとつのヘッジファンドだけに投資することは賢明ではありません。いかにも優秀なマネジャーであっても不調なときはありますし、いかにも有望な戦略であっても上手く収益を上げらないときもあります。
 そこで、他の類の投資と同様、ヘッジファンドに投資するときにもリスク分散効果を考慮しアロケーション(配分)することが大切です。といっても、個別ヘッジファンドが受け入れる最低金額は1〜2億円の例が多いです。限れた運用資金で分散効果を得られるという点では、やはりFOF(ファンド・オフ・ファンズ)は個人投資家には有力な選択肢です。

 ただ、リスク分散が目的だからといって、投資するヘッジファンドの数を単純に増やすということではあまり良い効果を上げることができません。

 例えば、投資した各ヘッジファンド同士の相関性が高い場合。相関性が高いということは、ヘッジファンドAが下落するときに、ヘッジファンドB,C,Dなども下落する可能性が高いということですから、いくらヘッジファンドの数を増やしても分散投資の良い効果はなかなか得ることができません。

 もうひとつの分散投資のワナは、数が多いほどリスクが分散されているという固定概念に陥ることです。ただ、投資先のヘッジファンドの数が増えるほど投資先の中身がファローできなくなって、どのように儲かって、どのように損をしているかがわからなくなってくる可能性が高まります。顧客に対する説明責任を負うような投資家の場合、これは明らかに問題です。分散投資しているから安全ですと顧客に勧誘しながら、結果的にそのポートフォリオが損失を出した場合に内容をはっきりと説明できないようでは受託者責任が問われることになります。

 極端な話ですが、例えば過剰な分散投資でこの世に存在しているヘッジファンドのほとんどに投資したとしましょう。そのポートフォリオのリターンは、当然ヘッジファンド業界全体のリターンと同様になります。

 このようなインデックス(指標的)のリターンでも良いという投資家はいるかもしれません。ただ、その場合、特に入念なデューデリジェンスを行って有望な個別ヘッジファンドを発掘する必要はまったくなくなります。「全部」、無差別にヘッジファンド買い込むだけであればポートフォリオを構築するFOF運用者に高い管理費や成功報酬を支払う意味もまったくなくなりますので、このような戦略の「付加価値」(報酬の対価)を賢い投資家としては見極めたいところです。

 包括的なデューデリジェンスを経て投資判断するということは、それだけ個別ヘッジファンドの有望性に自信があるということです。そのような「ベスト」なヘッジファンドを発掘できたのであれば、ある程度ポートフォリオを集中投資するということも、ひとつのヘッジファンド投資戦略の考え方です。

 ただ、ヘッジファンドに投資した時点ではすべて「ベスト」であると確信を持っていても、「2割が8割の収益を上げる」ルールとか、ベンチャー投資の「2−6−2」ルールが現実的です。要は、2割が素晴らしいリターンを上げ、6割がほとんどリターンを上げることがなく、2割がまったくダメという法則ですが、ヘッジファンドも運用業界におけるベンチャービジネス。ヘッジファンドのポートフォリオの収益性は同じような現象が見られます。集中投資といっても、2−6−2ルールを考慮したぐらいの分散はやはり無難でありましょう。

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