ヘッジファンド投資のプロセス (12) 損切り

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

ヘッジファンド投資のプロセス (12) 損切り

 ヘッジファンドに投資するには入念なプロセスが必要でありますが、実は一番判断を悩むところはヘッジファンドへの出資ではなく、実は解約するときです。ヘッジファンドの解約にはおおまかに二つの局面がありますが、今回はそのひとつ、ヘッジファンドが損を出しているとき、いわゆる「損切り」についてお話したいと思います。

 厳正に事前調査した上で投資を行っていますから、ポートフォリオに入れた段階では投資家は各ヘッジファンドがしっかりと儲けてくれるという期待でいっぱいのはずです。ただ、現実としては、パフォーマンスが悪いファンドもやはり出てきます。「損切り」の難しいところは、自分の当初判断が間違っていたということをはっきり認めざるをえないということだけではなく、この時点で「損切った」後にパフォーマンスが戻すのではないかという迷いです。後、もうちょっとガマンすれば戻してくれるかもしれないという期待のささやきが即時判断を鈍らせます。

 このような迷いを排除する対策として存在するのが「ストップロス・ルール」。定量的にある程度、そのファンドが損失を出したときに、理由が何であろうと解約をする規則のことです。

 その「程度」のレベルは投資家によって様々ありますが、例えば私が以前勤めていた米大手ヘッジファンドでは、内部や外部マネジャーに運用を委託する場合に15%のドローダウン(Drawdown)にストップロスを設けていました。ドローダウンとは、そのマネジャーのパフォーマンスの最高益の水準(HighWater Mark)を基準にして、そこからどれくらいパフォーマンスが下げているかを示します。

 この15%の損失は、仮に50%マネジャーが儲かったとしても、その儲けを全額ぶっ飛ばして、コスト(原価)から下げた15%というレベルではありません。50%儲けたレベルから15%下げた、要するにコストから35%ぐらいの儲けの水準でも解約されることになります。ストップロスは絶対的はなく、上昇続ける浮動的なレベルに設置されるということです。

 先日に面談したマルチ・ストラテジー戦略の某米系ヘッジファンドは、内部に抱えているマネジャーらが5%ドローダウンをした場合に資本配分を25%減額、10%下げたときに50%減額、15%下げたときに解雇・解約というルールを設けていました。

 ヘッジファンド・マネジャーは常に絶対収益を上げるという重い宿命を負っているということが、この「ストップロス・ルール」でわかることでしょう。-----
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