型にはまる投資の限界パート(2)

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

型にはまる投資の限界パート(2)

前回からの続きです。例えば、ヘッジファンドが株式市場中立性に縛られる戦略の場合、その市場中立性の「型」を造り上げるために彼らのポートフォリオには必ずしもベスト・アイデアではない、「詰め物」の株式が組み込まれる可能性が高まります。ベスト・アイデアではないのであれば、その投資から期待されるリターンは当然下がるはずです。

 一方、こういう考え方もあります。「ベスト」とマネジャーが思っていても、その銘柄の投資は予想が外れる場合も多い。だから、「詰め物」を入れても市場中立性を保ったほうがリスクをコントロールできる。要は、足元の価格変動を抑えるというパス(進路)を重視したいために、最終ゴールである期待リターンを多少犠牲にしても良いということです。どちらかが正しいということではなく、価値観の違いですね。

 確かに積極的に「ベスト」な投資アイデアを組み込もうとするヘッジファンド・マネジャーは、パフォーマンスの足元の変動は激しい場合もあります。リターンを追求するために、ベスト・アイデアに集中投資することもありますし、ポジションを造るのを市場コンセンサスより先走ったり、場合によっては逆張りする可能性があるからです。

 だからこそ、このようなリターン重視のヘッジファンドを複数に組み込み分散投資することにより、全体の変動リスクを抑える意義があるといえます。正に、ファンド・オフ・ファンズの効能性を活かせる投資スタイルです。

 一方、例えば価格変動リスクを抑えるために期待リターンも意図的に犠牲するような、おとなしいヘッジファンド戦略を分散投資することに、それほど意味があるのでしょうか?複数の現地産の白米を混ぜたご飯だけを食べるより、白米と色々なスパイスが調和されているカレーと一緒に食べたほうが美味しいですね。

 組織というものは他人に物事を説明しなければならない責任が生じますので、その担保として「型」を重視します。そういう意味で、組織が投資を行うときの付き物は「投資委員会」です。確かに様々な視点から投資先のヘッジファンドとそのマネジャーを検証するという意味ではとても重要なことです。ただ、ちょっと間違えると、皆が「判を押す」という形式に頼り過ぎて能動的な運用判断ができなくなり、返って運用が平凡化されてしまうという罠に陥ります。
 特に、戦略的配分に固定観があった場合、あるいは、流動性やその他の規定に必要以上縛られてしまうと黄色信号です。ベストなヘッジファンド・マネジャーを発掘して投資することより、その戦略や規定の枠を埋めるためにヘッジファンドを探そうとする考えが先行するために、デューデリジェンスも甘くなってしまう事態を招く可能性もあります。これでは、まったく本末転倒です。
 ヘッジファンドは、そもそも伝統的投資と比べて型にはまることなく、ベストな収益機会があるところに能動的に投資できるということがエッジである運用です。そのヘッジファンドに投資するときにも、型にはまることには気をつけたほうが筋は通っていますね。

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