ヘッジファンドの奴ら−ルイス(某米大手ヘッジファンドの人間像)

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

ヘッジファンドの奴ら−ルイス(某米大手ヘッジファンドの人間像)

80年代末に某インベストメントバンクのディーリングルームから独立してヘッジファンドを設立したルイスは黒ヒョウのような存在です。プライバシーを好み、一般マスコミなどに登場することは絶対なく、外部者から見ると暗闇に潜んでいるようなハンターです。ややシャイな性格ですが、獲物を捕らえたら、絶対に逃がさないような鋭さの持ち主です。

 性格が暗いというより、クールというのでしょうか?体型にも無駄がなく、ルックス的にも女性たちに言わせると「かっこいいィ!」らしいです。もてそうな男ですね。実際、そうらしいですが。。。

 90年代では、ソロスやタイガーに次ぐ大手クラスのヘッジファンドに伸し上がった業界の実力者であります。誰よりも、多く早く情報を知りたいというのが彼のモットーであり、会社はその彼が中心の情報収集・分析マシーンでありました。

 彼の手元にはいつも、分厚い「データブック」という世界各国のマクロ分析を総合的に統一してあるものがあり、社内エコノミストたちが常時にその内容をアップデートしていました。もちろん、経済だけではなく、政治や政策関係の番人、あるいは市場情報やセンチメントの番人、及び各分野に目利きを持ったファンドマネジャーのグループが彼を囲んでいます。ルイスの机は、まさに情報の司令室であり、彼が移動する数日前にはシステム担当のものが必ず先に入って不備がないかをチェックしていました。

 ある日、日本では「著名な」エコノミストが会社訪問したときにプレゼンをグループで聞いていたところ、「ここから得るものはない」と判断したようで、ルイスはミーティングの途中で急に退席してしまいました。エコノミストの顔は紅潮。「日本の政治家たちが俺の話を聞いてくれるのに、何故こいつは!」と思ったんでしょう。

 ロンドンのオフィスに財務省幹部が訪問したときに、やたらにぶっきらぼうに質問を投げかけてきた若いアメリカ人がいた、と後からその役人から苦情を聞きました。気が付いていなかったようです。その若いアメリカ人がルイスであったことを。現在でも確かまだ彼は40代です。

 私が入社してからの1年は、NYでアジア時間帯のトレーディングを担当していましたが、ルイスからの専用腺が鳴ると、いつも飛び上がるように電話を取っていました。夜勤の仕事を終えて早朝に帰宅し、床に就くと毎晩(いや、毎日ですね)ルイスや仕事のシーンが夢にも訪れる生活を送っていました。でも、遥かに、私以上に仕事のことを24時間体制で真剣勝負していたのは、間違いなくルイスであったでしょう。

 大成功した大手ヘッジファンドの創立者であれば、一生、いや、何世代でも使い切れないほどの巨万の富を手に入れたことになりますが、何故、このようなシビアな生活を送りたがるのか?やはり、常に「勝ちたい」という自分との戦いなのでしょうか?凡人にはわからない、貪欲を超えている次元でしょう。
 ルイスの趣味は、スカッシュ。ロンドン・オフィスの彼の室からドアを開くとそこにコートが設置してあります。そして、夏休みはアフリカでサファリ狩り。それも大型ライフルのような弓でライオンを仕留める。この弓がときどきオフィスに置いてあったんですね・・・このボスを怒らしてはならないと、よ〜く思っていました。

 こんな人物でありますが、私の長男が誕生したときに会社で一番早くお祝いのメッセージを送ってくれたのはルイスでありました。実は、冷静なハンターでもハートはあるのでした。

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