シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)
What does your GUT tell you?「オマエの腹は何を言っている?」
スタンは、あまり理屈が好きではありません。スタンに日本の株式市場について報告しているときに、あれこれと詳細の説明をするより、「要は、買いなのか?売りなのか?」という相場観を聞きたがる、根っこからのトレーダーです。
その自身の腹はかなり大きく、「ガハハ」と大声で笑うデッキ上の海賊の船長さんのよう。スタンが調子に乗っていると(それは、ほとんどの場合でしたが)、ディーリング・ルームが明るくなりました。好き嫌いははっきりしていますが、「仲間」と受け入れれば人望は厚い、懐っこい性格です。
スタンと初めて知り合ったのは私のゴールドマンサックス時代で、同僚が辞めたときに引き継いだ、小さなヘッジファンドのオーナーでした。大した金額ではありませんでしたが、スタンは本当に相場が好きで、日経平均先物の取次ぎで毎日(彼の毎晩)何回も彼の自宅に電話をしていました。
そんな関係で、彼と当時に同棲していたリズとも親しくなる次第。「東京はどんな感じ?」と時々聞かれましたが、素人だと思って適当に答えるとかなりシャープな返答が戻ってくる。後から知りました。リズはソロス・グループの幹部であったことを。
自分のヘッジファンドを立ち上げる前、スタンは(今となり業界から看板が消えてしまって信じられない)ソロモン・ブラザーズの副会長で株式部門を仕切っていた大物トレーダーであると周辺から聞いていました。しかし、先物を振る玉はそれほど大きくなかったので、私としては「ふ〜ん」という感じであまり腑に落ちませんでした。ソロモンと言えば名門トレーディング・ハウスだったので、そこで大物であるということであれば、もっと大玉を振ると思っていたので。
自分の考えが愚かだったということがわかったのは、スタンが自分のヘッジファンドを閉鎖して、ムーア・キャピタルに転職してからでした。急に、一回に取引するサイズが50倍ぐらいに拡大したのです。理由は、実に簡単でしたが、そのときまで私がきちんと認識していなかったことでした。
スタンのヘッジファンドは約50億円の小規模なものに比べて、ムーア・キャピタルは3000億円ぐらいの当時の最大手クラス。要は、60倍の規模のファンドです。スタンが大きいポジションを持てなかったのは彼の能力や度胸ではなく、使える資本のサイズが違ったからでした。
ヘッジファンド運用の尺度は、あくまでも資本収益率。何本ポジション(資産)を持って、何本儲けたという絶対額の予算を組むのではなく、配分された資本に対して何パーセント収益を回すことができたかに尽きます。年間30億円という大金を儲けたとしても、資本が3000億円であればたった1%に過ぎません。ただ、資本が50億円であれば60%という高リターン!
ますますヘッジファンドのとりこになった私は、95年の暮れの最後の電話会話のときに、「スタン、僕みたいな人間を、そちら側で使えないかなぁ」と自分を売り込みました。「何かできるか考えてみよう」というスタンのうれしい答えが、私がこの世界にどっぷり浸かったきっかけになりました。
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