ヘッジファンドの奴ら−アレックス(某米大手ヘッジファンドの人間像)

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

ヘッジファンドの奴ら−アレックス(某米大手ヘッジファンドの人間像)

ざわざわしているディーリング・ルームを斬るように電話の着信音が鳴ります。お!この電話番号は、と素早く電話を取った途端、「Where are JGBs?」と甲高い声が聞こえてくる。肌がピリピリします。アレックスが国債先物の大量の注文を入れてくるからです。

 当時、私はJPモルガンで国内外の機関投資家向けへ日本債券担当をしていました。「良くわからないから、話をしてくれない?」と他の部署から回されてきて取った電話がアレックスとの最初の出会いでした。ムーア・キャピタルというヘッジファンドでアジア時間帯の市場をNY本社からトレーディングしているということでした。ソロスやタイガーやチューダーは聞いたことあるけどなぁ・・・という感じでした。

 「興銀・長銀・日債銀の利金債のスプレッドが広がりはじめているようだけど、この理由が何か教えてくれないか?」銀行の個別信用リスクなど認知されていないような時代から卒業しようとしていた当時でした。国内の投資家、ましてや海外投資家からこのような説明依頼を受けたことがなかったので、ちょっとびっくり。

 「へえ〜」と感心しながら、こちらは自分が知っている範囲のことを説明したら、「ヘイ。キミの話はわかりやすいね。またちょくちょく話をさせてくれ」と、この偶然のめぐり合わせからアレックスとの関係を築くことができました。
 日本の経済や投資家動向に関するデータを「え?こんな細かいところまで見てるの?」という要求のやりとりを繰り返していく内に、こちらも面白くなってきました。「日本は、こちらのホーム・マーケット。負けてはたまるか!」という気分でアレックスが要求するもの以上、あるいは要求する事前に、こちらから色々と情報を提供するようになりました。

 「こんなこと聞いてくる人、シブサワさん以外に他にいません。」と当時の社内エコノミストたちはあきれて目を丸くしていました。それは、私にはアレックスというエンジンが背景にあり、アレックスはルイス・ベーコンというムーア・キャピタルの創業者というエンジンが背景にあったからです。

 アレックスとの仲は深まり、冬季になるとアレックスに毎年スキーに誘われて、よく米国へ出張?に行きました。日本ではボーダーという存在がそれほど知られる前に、アレックスと一緒にスノーボードに挑戦。(というと、格好が良いように聞こえますが、実態はまずまず。)

 アレックスと最初にスキーに行ったときです。初日に宿泊先で「やあ、元気か?」とこれからの楽しい1週間が始まろうとしているときに電話が鳴りました。

 アレックスが「そうか、わかった。」と返事をしているのが聞こえます。ルイスが「アレックスは、何処にいるんだ!」とわめいているらしいと。アレックスは、ため息もせずに「ゴメン、ちょっとNYに用事があるので、数日間、失礼するよ。」とコロラド州のロッキー山脈から、NYへトンボ帰り。数日後、何もなかったようなクールな顔で、戻ってきました。

 「凄いタフな会社なんだなぁ。。」と他人事のように思った私。数年後に私がそのアレックスの後任になるとは、夢にも思っていませんでした。

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