ヘッジファンド戦略(1) 株式ロングショート

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

ヘッジファンド戦略(1) 株式ロングショート

ヘッジファンドの原点です。株式運用は、経済(マクロ)や企業業績(ミクロ)の拡大によって株価が上昇する際には素晴らしい成果を出すことができます。ただ、何らかの理由で市場が下落する局面では損失の額は少なくありません。1949年にアルフレッド・ウィンスロー・ジョーンズという社会学の博士がふと思いつきました。

 株式のロング(買い)とショート(空売り)を組み合わせれば、市場が下落した際には買いのポジションは損が出るが、空売りのポジションは益が出て、損失から逃れるかもしれない。このように「守られた」ポジションを「ヘッジ」と言います。このような手法を活用したファンド、すなわち「ヘッジファンド」の誕生です。

 経済や株式市場全体という「マクロ」が上昇しても、個別の株式という「ミクロ」は全部同じ比率で上昇する訳ではありません。上昇する際にはどこかの産業セクターや個別企業が元気良く全体を引っ張って行くという傾向が一般的です。一方、全体が下落基調でも、打たれ強いセクターや企業もあります。このように強い銘柄は、その企業の業績に基づいています。

 では、このように企業業績に基づいた強い企業を買って、逆に弱い企業を売れば、経済や市場全体が上昇しようが、下落しようが、その組み合わせのポジションが儲かる可能性は高まります。このように、株式ロングショートのマネジャーの目利きというのは、株式市場全体の方向性を予想するのではなく、包括的かつ詳細な企業業績分析を基に今後の企業の比較的な強弱を発掘(ストック・セレクション)してロングとショートの組み合わせを投資することです。
 なぜ、「比較的な強弱」が大事かというと、絶対的に強かった会社Aを買って絶対的に弱かった会社Bを空売りすると、逆説に聞こえるかもしれませんが、実は損失が出てしまう可能性は低くないのです。

 Aはその強さに引かれて買っている投資家が多く、Bの場合はその弱さを敬遠して売ってしまった投資家が多いのです。この状態で、強いAが弱い予兆を出したときに次に買う投資家が少なくなり、弱いBが回復の予兆を出したときには次に売る投資家が少なくなります。いくら強い会社でも株価が上昇を続けるには次の買い手が必要で、いくら弱い会社でも下落するときには次の売り手が必要になります。

 企業分析により、このような相対的な強弱の予兆に確信を持った株式ロングショートのマネジャーは、逆に強かったAが相対的に弱くなるという見込みがあるので売って、弱かったBが相対的に強くなる見込みがあるので買います。そういう意味では、市場のコンセンサスを常に先取る情報収集、分析とセンスが必要であります。

 株式ロングショートは様々なヘッジファンド戦略の中でも、株式市場というマクロ領域の中で多数の個別銘柄というミクロが企業業績によって様々な動きをするので、全体が芳しくないように見えても、勝者が必ず存在することが大きな特徴です。この戦略を活用するヘッジファンドのマネジャー数も圧倒的に多く、リスクを抑えながらもリターンを重視したい投資家であれば、決して外すことができないヘッジファンド戦略です。

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