ヘッジファンド戦略(2) 株式ロングショート

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

ヘッジファンド戦略(2) 株式ロングショート

株式ペア・トレーディングとは、伝統的な株式ロング・ショートと同じように企業業績を基に株式の買いと売りを選別しますが、違いはポートフォリオ構築にあります。株式ロング・ショートの場合は、買いと売りの銘柄は個別に判断して、「ボトム・アップ」した結果がポートフォリオになります。買いも売りも単独に収益の期待に基づいて、ポートフォリオが構築されます。

 一方、株式ペア・トレーディングでは、買いと売りはひとつのセットとして考えます。一つずつの個別銘柄の買いと空売りはそれぞれ絶対的な収益源とは考えず、あくまでも別の銘柄との相対的な期待収益に限定しています。まさにペアの間の収益源を目的とする戦略であるので、買い側と空売り側のポジションは基本的に均衡していて、「ネット・ポジション」はほとんど0%に近いです。

 従って、ペア・トレーディングのほとんどの場合は同業者、あるいはビジネスチェーンで関連する産業セクター間のロングとショート組み合わせです。例えば、自動車産業であれば、似類のマクロ要因に影響されるので、この同じ自動車セクター内、あるいは下流の製造業者との買いと売りを組み合わせれば、その業界に影響するマクロ要因などのリスクを排除できると考えるからです。
 ですから、そういう意味では、両側が独立した収益源というより、どちらかが相手の「ヘッジ」のような立場であります。

 例えば為替レートが動けば、輸出業である自動車セクター全体に影響を与えますが、その影響の強弱は個別企業の体勢によってでます。しかし、自動車セクターと銀行セクターの例では為替が両セクターに与える影響はかなり違うものになることでしょう。単純な例では、自動車会社Aの業績拡大を見込んで買いたいと思うが、為替レートの動向が不確実なので、そのヘッジとして自動車会社Bを売り立てるというようなケースです。

 伝統的株式ロング・ショートと比べて、ペア・トレーディングのほうが個別銘柄間の価格傾向の統計的分析を重視する向きがあります。銘柄A(1000円)と銘柄B(600円)の現在の差額(400円)は過去の平均値(100円)と比べて、大幅に価格乖離が広がっていると判断した場合は、Bを買って、Aを空売りするようなパターンです。仮に、差額が平均値に戻ったとしたら300円の収益が上がります。AとBの株価が上昇しようと、下落しようと。
 このように、ふたつの銘柄の現在の市場での価格間の乖離が平均的乖離に収束(コンバージェンス)するという前提に立った戦略でもあります。何かのショックで離れてしまった二つの磁石が、いずれ元にくっつくだろうという考えです。

 わかりやすい手法ではありますが、弱みがあることも確かです。「過去」の例ではこの広がった乖離が収束したのに、どちらかの銘柄における大きなパラダイム・シフトが起こった場合は、収束どころか銘柄間の価格水準が分岐してしまい、「股裂き状態」という致命的な打撃を受けてしまうリスクは排除することはできません。

 差額は400円から100円に戻ると思ったのに、例えばA社の革命的な新規商品の導入のためにAの株価が1400円上昇したのに、B社は動かなかった場合、差額は800円に更に拡大し、400円の損失になってしまいます。
 わかりやすい戦略ではありますが、類似の買いと売りの組み合わせなので、収益チャンスが限られている割には、リスクはそれほど低くないということで、ペア・トレーディングを敬遠するマネジャーや投資家は少なくありません。 -----
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