シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)
Statistical Arbitrage(統計的裁定取引)の省略でありますが、裁定取引とは教科書的にいうと、「リスク無しで儲けられる」ことを示します。こんな状態が存在するのであれば最高ですね。お金を損することがなくて、儲かる可能性しかなければ。ただ、そんな美味い話があるのでしょうか?
現在のように情報の障壁が少ない時代では、単純な裁定チャンスは直ぐに市場参加者らに眼を付けられて閉じられてしまいます。これが「効率的な市場」のひとつの定義です。裁定チャンスがないことです。裏を返すと、裁定取引に収益チャンスがあるのは、「非効率的な市場」の場合です。
裁定取引の機会があるとすれば、それは同じ市場で似たもの同士が取り引きされているのに、何らかの理由で通常よりその価格の差額が開いているときであります。特定の銘柄に大口の買いが入ってきたという短期的な需給のズレかもしれません。
ポイントは、値段の差額が収益源であって、値段の上下そのものではありません。値段が上がっても下がっても、その差額が平均値に戻れば収益を上げることができる。だから、市場中立型の裁定取引と言います。
この戦略は、様々な統計的モデルを駆使し、多数の上場株式の間の相対的な価格の乖離をコンピューター・プログラムで常時に、自動的にスクリーニングをします。
そして、ある銘柄の相対的価格間が何らかの原因で統計的に限度まで広がった場合は、プログラムが見逃しません。割安な銘柄を買って、割高な銘柄を空売りし、いずれその相対的価格が平均値に収束したら、そのポジションを閉じて、益を確保します。
しかし忘れてはならないのは、いくら正確に統計的な結論をモデルが吐き出したものであっても、所詮、過去は過去のものです。統計だけの投資は、バックミラーだけを見ながら運転していること同じなので、長時間のドライブには向いていません。バックミラーでは道は曲っていないのに、実際にこれからどのタイミングに、どれくらい道が曲るかはわからないので。
このようなリスクを軽減するために、人為的判断が入らないコンピューターモデルとシステム化された自動取引で、多数の株式ポジションの組み合わせを素早く発掘して、素早く投資して、素早く逃げることがスタット・アーブの典型的タイプであります。
別の言い方をすれば、道に散らばっているコインをこまめに拾っていくような作業でもあり、気をつけて機敏に動いていないようであれば、いきなりダンプカーに引かれてしまうリスクがあるということです。
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