シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)
株価は複数の要素(ファクター)で構成されているという考えがファクター系の株式市場中立型の戦略です。要は、投資家は意識的に特定な要素に注目して投資判断を行うこともあるし、場合によっては無意識的に反応しているかもしれない。そして、場合によっては、特定な要素にはまったく反応しないこともあります。
この分野で活躍するヘッジファンドマネジャーたちはファクターが「株価を説明する」と言うことを良く口にします。確かに、ちょっと考えてみると株価が反応しそうなファクターはたくさんあります。
例えば、企業の売上げ伸び率や営業利益の伸び率という業績成長に注目しているときがあるかもしれないのです。もしかすると、企業が保有している純資産という企業価値か、資本に対する企業の収益性あるいは債務かもしれない。これは、株式ロングショートのマネジャーも検証するようなファンダメンタルズ分析のファクターです。
一方、短期・中期・長期の株価のリターンや、過去1年の高値と比べて現在どの水準かという株価のデータポイントが株価に影響を与えるときもあります。これは、スタット・アーブのような株価の統計的な要素です。もちろん、日本株の場合は、外国人動向の影響は大きいので、外国人投資家比率のようなテクニカル分析にも重要なファクターになる場合もあります。
そして、もちろん為替や金利動向のようなマクロ的なファクターも株価に影響を与えることもあります。
このようなファクターを40〜50ぐらい回帰分析モデルで現在の株価を「説明しよう」とするのがこの戦略の重要なステップです。ただ、ある意味では、このような回帰分析モデルは似たり寄ったりで、これだけでは他の市場中立型ヘッジファンドとはそれほどのエッジはないでしょう。
しかし、調理道具や食材がほとんど同じものが手元にあっても、名人シェフと凡人とは同じ味を出すことはできません。やはり、どの材料をどの程度に調理するかによって結果はまったく変わってしまいます。
同じように株式市場中立型ヘッジファンドは産業セクターによって、そのとき、その状況では株価を説明できていないようなファクターを外すなど、色々と微調整をすることによって、株価の説明力を高めようとします。
このような高い説明力のファクターに基づいて、コンピューターモデルで株式のポートフォリオの期待リターン順にランキング(スコアリング)します。通常、これは1ヶ月毎に更新できるファクター数値をモデルに再入力してスコアリングを更新します。
スコアリングを基にポートフォリオを組み上げますが、市場中立型のヘッジファンドマネジャーの運用基準は、いかにパフォーマンスの変動を抑えながら収益を上げることかであります。例えば期待リターンが近い銘柄間での買いと空売りを組み合わせたほうがその期待リターンの買いと空売りのペアが大幅に外れることがなく、リスクを抑えることができると考えます。
このようにリスクを徹底的に制限したいと考えるマネジャーですから、株式ロングショートのように買い越しのバイアスは取りません。あくまでも買いと売りの影響を均衡させて、忠実に市場中立型にポートフォリオを構築します。回帰分析モデル等で現在の株価を理性的に「説明」して現実的に収益を上げようとするというこの戦略では、数学者オタクのような存在のマネジャーも少なくはありません。
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