ヘッジファンド戦略(6) グローバル・マクロ

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

ヘッジファンド戦略(6) グローバル・マクロ

90年代にヘッジファンドというと、このグローバル・マクロ戦略を活用する大手ヘッジファンドが代表格でありました。「英国銀行を叩き潰し」一晩で10億ドルを稼いだとして名を上げたジョージ・ソロスのイメージは強烈でした。

 従って、グローバル・マクロはリスクが高いヘッジファンド戦略というラベルが貼られてしまいましたが、実際に98年に大型破たんして注目を集めたのはLTCMという債券レラティブ・バリュー戦略のヘッジファンドでした。
 グローバル・マクロ戦略のひとつの特徴は、その貪欲さ。グローバル、世界でどの市場でも、どの商品でも動くものは収益チャンスとして投資対象にしてしまいます。

 現在の経済動向や政策的背景とそれに伴う資本のフローを分析の出発点であります。その資本の流れは、ある国の経済的・政策的要因で流出あるいは流入するかもしれない。債券市場に保有されていたお金が、景気回復で株式市場へ流出するかもしれない。債券や株式というカネの世界から、モノという産物商品に流れるかもしれない。

 このようなマクロ判断から、どの市場に影響を与えるかを判断し、その判断を有効に表現できるような金融・産物商品に実際に投資をします。

 基本的に、この資本フローに基づいた収益チャンスを発掘する戦略なので、市場中立型や裁定取引形というより為替、金利、株式、産物商品などの市場方向性に賭ける戦略で、ダイレクショナル(directional)戦略とも言います。
 では、グローバル・マクロ戦略はどのように「ヘッジ」をするのでしょうか。ひとつは情報に対する執念です。例えば、誰より先に多くの優れた情報を手に入れたいということが、私が以前勤めていた大手グローバル・マクロのヘッジファンドの企業文化でした。情報の有利性が、最も有望なヘッジになるという考えです。

 ふたつは分散投資です。広大きなマクロ判断から資本フローが生じると思っても、それを一つだけの商品やポジションに賭けることはしません。従って、グローバル・マクロのポートフォリオは、一見、かなり複雑なものに見えます。グローバル・マクロのもうひとつの特徴は、基本的に流動性が高い商品に投資することであります。頻繁に売買するというスタイルや直ぐに転売する必要性がなくても、何かあったときにはポートフォリオを短期間に軽くできるということもグローバル・マクロ戦略のリスクマネジメントの考え方であります。
 流動性が高い商品に投資しているということであれば、基本的にわかりやすい商品に投資していることにもなります。どうやって儲けたか?どうして損をしたか?これが極めて説明しやすい戦略です。買った・売ったものが正しかったか、間違っただけです。

「運用モデルがこのような市場環境を想定していなかった。」「この複雑なデリバティブ商品の時価評価が実はずれていた。」投資した内容が、実際には良くわかっていなかったという説明責任の欠落の問題は、グローバル・マクロにはありません。

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