ミニ小説【男泣きから鉱山王へ】 ベンチャーキャピタル投資:明治スタイル

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

ミニ小説【男泣きから鉱山王へ】 ベンチャーキャピタル投資:明治スタイル

第二章

 明治7年。筆頭株主で大口取引先の小野組の倒産で、連鎖倒産の危機に陥った第一国立銀行。渋沢栄一は、何とか資金回収しなければならないと、小野組の生糸業務のトップまで出世していた古河市兵衛という人物を尋ねた。

 ただ、市兵衛が仕切っていた糸店は良好な結果をあげていたので、本人は知らん振りできる。どのように説得できるのであろうか。

 面と向かって、栄一は熱弁を振う。せっかく創立された日本の初めての銀行が一年も経たず倒産してしまうとは、日本の発展には量りきれない打撃である。
 市兵衛がすっと手を伸ばした。そこには糸店の財産すべてを抵当として差し出すという紙があった。この小さな手の動きで、市兵衛はそれまで築いてきたものをすべて放棄し、無一文になってしまった。

 さすが市兵衛も声をあげて悔し泣きだした。

 栄一は「自分が破産をさせたというのではないし、おたがいにまだ年も若い。」
栄一は34歳、市兵衛は42歳のときであった。「これからおおいにやろうじゃないか。」と栄一は市兵衛をなぐさめた。

 その翌年。市兵衛は新潟県の銅山の開発に手がけて成功する。このときに無一文の起業家が資金を調達できたのは、その1年前に築いた栄一との深い信頼関係からであった。

 明治十年には、栃木県の足尾銅山を買い取ったが、そのときも栄一の資金援助を受けて開発にあたった。渋沢栄一が資金を提供した相手の最上位の一人は、この古河市兵衛である。

 そして、明治二十年。古河市兵衛は日本の全銅産出量の40%を占め、日本の銅山王になる。古河財閥の祖師である古河市兵衛が作った銅山の経営会社は現在、古河機械金属として存在し、古河電工、富士電機、富士通、ファナック、など「子供」、「孫」、「ひ孫」などの大企業が創業者のDNAを引き継いで誕生している。

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