「ペイオフ」なんて怖くない

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

「ペイオフ」なんて怖くない

4月からのペイオフ解禁に注目が集まっています。報道を見ていると何だか大変なことが起きるような騒ぎですが、正しい知識を持っていれば不安になる必要はありません。

3つのポイントで説明します
●「ペイオフ」とは預金の世界の話、しかもすぐ発動されるものではない●とは言え、まずは今ある預金をどうすれば良いのかを考える
●「ペイオフ」対象外の商品のことも理解する

● 「ペイオフ」とは?
銀行・信用金庫などは預金保険法という法律に基づく預金保険制度に加入しています。ペイオフとはこの預金保険制度のなかの預金者保護の一つの方式です。ペイオフ方式とは預金者に対して預金保険機構が直接保険金を支払う方法ですが、4月にペイオフが解禁されたから、直ちに発動されるものではありません。
なぜペイオフ「解禁」なのでしょうか?それは、現在(2002年3月末まで)は特例措置としてすべての預金等が保証されており、この特例が無くなるから「解禁」なのです。

2002年4月からどうなるのか?まず今年の4月からは定期預金、貸付信託などの商品の預金保険の保護限度額が1金融機関1預金者につき元本1000万円とその利息までになります。そして2003年の4月からは当座預金・普通預金・別段預金なども同様の扱いとなります。

● 今ある預金をどうするか?

まず、1000万円を超える定期預金を普通預金に移すことが考えられます。普通預金に預け替えれば、来年3月末までは金額に関わらず全額保護されます。しかし、これは来年3月までしか有効ではなく、いずれまた対応を考えなければなりません。

そして、預金を複数の金融機関に分散させる。例えば、2000万円の定期預金があるなら、半分に分けて別々の金融機関に預けるだけで全額を預金保険で守ることができます。

さらに、金融機関の経営状態をチェックしましょう。最近では預金者からの問合せに対応してディスクローズを充実させる金融機関が増えています。業務純益(本業の儲け)の水準、不良債権の状況、有価証券含み損益、自己資本比率といった項目を比較することで経営状態を比較してください。またムーディーズ、S&Pといった格付機関のレーティング(シングルA、トリプルBといったもの)や株価の動きも確認しましょう。

● 「ペイオフ」対象外の商品のことも理解しましょう

まず「預金保険」とは「預金」を守るための仕組みなので、証券会社や生命保険会社、郵便局などとは直接関係ありません。銀行などの預金商品に関係することなのです。

意外に気がつかないのは「外国銀行の在日支店は日本の預金保険制度の対象外」ということです。外貨預金で利用されている方も多いと思いますが、外銀の在日支店の預金は預金保険制度に加盟しておらず、現在でも万一の時も預金保険制度では保護されません。これは外貨定期預金も円普通預金もすべての商品について当てはまります。この場合、預金者は預金している銀行などの信用リスクを取っていることになります。(さらに言えば日本の金融機関の海外支店の預金等も対象外です。)

そもそも預金とは預金者が銀行にお金を貸しているのと同じことです。銀行に預金をするとそれは銀行のバランスシートの負債に記載されます。だから預金保険が無くなれば預入れ先の銀行の信用リスクが問題になるのは当然と言えば当然です。

ここで投資信託との比較をしてみましょう。投資信託は預金保険とは関係がない元本の保証のない商品です。しかし投資信託は、投資先の分散と保有資産の分別管理という方法でリスクの管理を行っています。

資産を分散投資することで1つの投資対象に問題が生じてもその影響を他の資産でカバーすることが可能になります。これが投資先の分散です。

また投資信託は販売会社(証券会社)が集めた資金を運用会社の投資方針に基づき運用し信託銀行が管理を行います。投資信託の資金は信託銀行の他の資金と区分されて管理が行われます。販売会社、運用会社、信託銀行のどれが破綻しても分別管理がしっかり行われていれば資産は守られます。

投資信託と預金を比較した場合、異なったリスクがあることがわかります。預金保険による預金の全額保証がなくなれば、銀行という1つの企業への「預金」と分散投資と分別管理の「投資信託」、それぞれのリスクの違いをしっかりと見極め、商品の使い分けを考えることが必要になります。

いずれにせよペイオフ解禁によって、「預金」が他の金融商品に比べ、絶対的に安全である、という時代が終わることだけは確かなようです。

ご参考:預金保険機構のページ http://www.dic.go.jp/qa/qa.html

(マネックス証券 資産設計部 内藤忍)

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