ETFとインデックスファンド

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

ETFとインデックスファンド

前回、前々回とインデックスに関してお話をしました。
インデックスファンドでの運用といえば、通常は投資信託を想定しますが、昨年の法令改正に伴い、ETFという商品が登場しました。まだあまり馴染みのない商品ですが、個人の資産設計に活用できる商品なのでしょうか。

● ETFとは

ETFとは、Exchange Traded Fundの略。日本語に直訳すれば「取引所で取引される投資信託」ということになります。正式な名称は株価指数連動型投資信託受益証券です。(漢字ばかりでかなり長いですね)
日本では、昨年から日本の株式インデックスに連動する商品が東証や大証に上場され株式と同じように取引されています。例えば日経平均連動型、TOPIX連動型など既に9つが上場、本日さらに4銘柄が追加され計13銘柄となっています(2002年3月29日現在)。

ETFは日本ではまだ新しい商品ですが、海外では1990年にカナダのトロント証券取引所に上場されたのが最初です。その後、米国で急成長しました。S&P500インデックスに連動するSPDRs(スパイダーズと読みます)などはよく知られています。

ETFの特徴は、投資信託のようなインデックスに連動する分散投資を行えるのに、株式と同じように取引所の取引時間中に時価による取引が可能という、投資信託なのに株式の要素をもった商品であるということです。

例えば、通常の投資信託は後からわかる基準価格でしか取引できませんが、ETFなら指値・成行での注文も可能です。取引方法も、マネックス証券では株式取引の画面で売買注文を入力します。投資信託の画面にはETFはありませんのでご注意を!1305(ダイワ上場投信−トピックス)、1306(TOPIX連動型上場投資信託 )、1330(上場インデックスファンド225)といった銘柄コードを入力すると株式取引画面でETF銘柄が出てきます。
● ETFの仕組み

ETFの仕組みをカンタンに説明しておきましょう。

ETFの設定は、投資成果が指数に連動するように集められた指数を構成する株式パッケージとETFの受益証券を交換することからはじまります。例えば、日経平均のETFであれば225銘柄とETFの受益証券を交換するわけです。ただしこの設定や交換をできるのは、指定参加者といわれる、特別な投資家だけです。一般の投資家は交換により発行された受益証券を市場で取引することになります。

ETFの受益証券と、指数を構成するそれぞれの株式は、それぞれ市場で価格変動しますが、受益証券と指数構成銘柄の間で裁定が働き、結果としてETFの値動きは株式指数に近い連動となります。また純資産総額と株価指数との相関係数(2つの連動の度合いの数字。1.0なら完全に連動することを示す。)が0.9以上を維持しないと上場廃止になるといったルールを設定していますのでインデックス運用商品としてのクオリティは高いといえます。

では、ETFと投資信託と比べてみます。コスト、税金、利便性が比較のポイントです。

● コスト

コストは、取引時にかかる取引コストと保有期間に応じてかかる保有期間コストの2つに分けられます。

取引コストですが、ETFでは購入時と売却時に株式と同様の手数料がかかります。手数料は証券会社によって異なりますが、マネックス証券であれば成行注文で最低1000円ですから、ETFを例えば最低単位の約11万円で購入したとすると手数料率は0.9%程度になります。一方、投資信託はノーロード(販売手数料無料)であれば、もちろんコストゼロです。

保有期間コストは一般にETFの方が低いといえます。ETFの信託報酬は1年で0.3%以下がほとんど。投資信託は低いものでも0.5%前後ですからこちらはETFが優位といえます。

● 税金

税金は手数料にかかる消費税を除けば、売却時と分配金支払い時にかかります。
売却の際、ETFは通常の株式と同様の課税となります。源泉分離課税を選択する場合は、実際の利益(損失)とは関係なく、売却代金の1.05%が徴収されます。申告分離課税を選択すると、年間を通じて利益があった場合、26%が課税されます。一方、投資信託は個別元本方式で値上がり分の20%が課税です。また、収益分配金への課税はETFも投資信託も、分配金受取時に20%が源泉徴収されます。

● 利便性

利便性ではどうでしょうか。ETFは取引所の取引時間中いつでも時価による取引が可能ですが、投資信託は毎日発表される基準価額での売買しかできません。一方で、ETFは商品にもよりますが、日経平均やTOPIX連動型の商品で購入金額が10万円以上となります。投資信託なら1万円からと10分の1以下です。またETFはドルコスト平均法や月次積立などのサービスがありません。投資信託なら毎月1万円づつ、といった定額での購入が選択できます。
● 結局どうしたら良いの?

ETFと投資信託、2つを比較すると一長一短あります。ETFには保有期間コストが安いが、買付時に売買手数料がかかる、最低投資金額が10万円以上と大きい、金額買付ができないのでドルコスト平均法が使えない、といったデメリットがあります。

したがって、ここではこれらの欠点を投資信託で補って運用する方法を提案したいと思います。ETFの売買手数料率を引き下げるには大きなロットで効率的に取引を行うことが必要ですが、資金的な余裕がなかったり、時間の分散投資という観点からはなかなか難しいのが多くの人の現実でしょう。

例えば、ノーロードの投資信託を使い少額から月次の定額積立を行い、ある程度の残高になったら、さらに長期の運用を予定している部分についてETFにスイッチする。例えば、投資信託で積立を行い、積立金額が100万円になったらETFを購入する。このような方法でドル・コスト平均法のメリットを残しつつ、買付時の手数料を節約するのが1つの方法です。税金や利便性なども考慮して、自分に合った2つの商品の賢い使い分けを考えてみて下さい。
長期の資産設計の観点からは、商品の違いを知ることも重要ですが、資産のどの程度を各市場に振り向けるかを決定し、実際に運用を実行に移すことの方が大切ではないでしょうか。この結論は先週と同じです。

(ETFの参考ページ:東証と大証)
http://www.tse.or.jp/cash/etf/listing.html
http://www.ose.or.jp/main_nf.html

(マネックス証券 資産設計部 内藤忍)

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