バンガードとフィデリティ

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

バンガードとフィデリティ

投資信託を運用の方法はインデックスファンドとアクティブファンドに大きく分けられることはご存知かと思います。個人投資の先進国アメリカで、この2つの運用方法の代名詞になっている会社が、バンガードとフィデリティです。
今回はこの2つの会社を比較しながらインデックス運用とアクティブ運用について考えてみたいと思います。

● 桁違いの資産規模

まずこの2つの運用会社がどの位大きな会社かイメージしていただきましょう。米国における投資信託(米国ではミューチュアルファンドと言います)残高で見ると、第一位がフィデリティで約127兆円、第二位がバンガードで同じく約75兆円の残高です(2001年末現在、1ドル=130円で換算)。日本の国内投資信託残高が45兆円(株式投信、公社債投信、MMF合計)ですから、この2社だけで日本の投資信託すべての合計の4倍あることになります。
● 歴史と実績

世界最初のオープンエンド型ミューチュアルファンドは、MFSが1924年3月に発明したマサチューセッツ・インベスターズ・トラストです(日本ではマネックス証券で販売しています)。以来、多くの運用会社が多様なファンドを市場に送り出してきました。

フィデリティは1946年に誕生した会社で個別企業を徹底調査する「ボトム・アップ・アプローチ」を50年以上続けています。現在、全世界で1700万人のお客さまにサービスを提供する世界最大の投資信託運用グループとなっています。

バンガードは1975年に事業を開始しました。インデックス・ファンドという当時見向きもされなかった新しい運用手法を徹底的に追求し、1660万人の顧客を擁するまでになりました。バンガードは規模では世界第二位ですが、ノーロード・ ファンドを提供する投信会社としては世界最大。しかも1996年から2001年までの資金流入額において、2000年の1年を除き、米国投信業界でトップを続けています。

激しい競争の中で、生き残ってきた2社にはそれぞれの理由があります。フィデリティは充実したリサーチと徹底した運用哲学により、市場平均を上回るリターンを実現してきました。バンガードは高品質のファンドを低コストで提供するという一貫した理念により、米国の個人投資家の支持を得てきました。それぞれの考え方をもう少し詳しく見てみましょう。

● バンガードの主張

インデックスファンドの利点をバンガード・グループは次のように説明します。
まず「投資はゼロサムゲームである」と考えます。マーケットに参加している投資家全員がマーケットの平均以上の成績をおさめることはできません。もし一人の投資家がマーケットより良いリターンを実現すれば、別の投資家はその分だけ負けることになるのです。

では人より優れたリターンはコストをかけると達成できるのでしょうか。バンガードは金融市場はほぼ効率的であると考えます。投資に関する情報は今日、だれでも簡単に入手可能になってきています。その結果、どんな優秀なファンドマネージャーでも長期間にわたって他のマネージャーより優れた運用成績を維持するのは難しくなってきていると考えます。

コストをかけて調査をしてもリターンが期待できないのなら、コストを下げることを考えた方が良い。インデックスファンドを作り、売買や調査にかかるコストを抑えることが、リスクを抑え長期的なリターンをもたらす最適な方法であるという理屈です。

実際、米国投信評価会社のリッパー社が、2001年12月までの10年間にわたるデータをもとに行った調査によると、バンガードの株式ファンドは、3分の2もの同種の他社ファンドをアウトパフォームしました。さらに、バランス型ファンドでは85%、債券ファンドでは88%、MMFではなんと98%の他社ファンドを打ち負かす圧倒的な競争力を示しました。

ただし、バンガードもアクティブファンドを完全否定しているわけではありません。市場の大部分は効率的であっても、いくつかの例外(アノマリー)はあり、それを利用するアクティブ・マネージャーにも利益を生み出す機会はある、と柔軟な考えを持っています。

● フィデリティの主張

フィデリティはマゼランファンドで有名なアクティブファンドがウリの投信会社です。アクティブ運用のボトムアップアプローチの有効性についてこう語ります。

フィデリティでは、綿密な個別企業調査を行なうことにより、企業の将来の成長性や財務内容等を分析し、投資先を決定する「ボトム・アップ・アプローチ」という方法によってインデックスを上回るリターンを達成できるという哲学を持っています。ボストン、ロンドン、東京、香港の4都市を拠点として300名以上のファンドマネージャー、アナリストが調査を行っています。

実際、フィデリティを代表するマゼランファンドは1963年5月の設定以来年平均20.20%のパフォーマンスを実現(2002年2月末現在)。これはベンチマーク(ファンドが評価基準とするインデックス)のS&P500を上回っています。

またマネックスで販売しているフィデリティ・日本成長株・ファンドも1998年4月の設定から昨年末までのリターンが5.76%となっており、ベンチマークのTOPIXの−15.23%を20%以上、上回っています。

● インデックスとアクティブは両立する?

2つの説明を読んで、どう思われましたか?インデックスには派手さはないがリスクを抑えコストを削減する堅実さが、アクティブには優れたファンドであればリサーチの価値があることをお分かりいただけたと思います。

2つの運用手法がそれぞれ米国において長い歴史を持っているのは、それぞれに存在価値があるから、という理由しか思いつきません。後はそれぞれの手法の長所をどのように活用するか、投資家の考え方にかかってくるのではないでしょうか。

そして個人的には、優れた運用哲学を持つ会社に更に投資家のニーズに合った商品を創造して欲しいと期待しています。例えばバンガードのTOPIXに連動する低コストのインデックスファンドや、(マゼランファンドは新規の投信買付は止めているようですが)フィデリティの米国株式に投資する外国投信などあればいいな、と思います。

最後に少しだけ宣伝すると、バンガード、フィデリティのファンドを両方とも購入できるのはマネックス証券だけです。どちらも1万円(台)から投資を開始することができます。

そして、バンガードとフィデリティが執筆するコラムを毎週お読みいただけるのはマネックスメールだけです。

(マネックス証券 資産設計部 内藤忍)

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