株式と投資信託、どっちで運用するのがいいの?(2)

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

株式と投資信託、どっちで運用するのがいいの?(2)

先週からの続きです。
(前回の内容は資産設計への道〜その14 をご覧下さい)
http://www.monex.co.jp/free/monexmail/backno/2002/20020412.html

● 株式と投信の違いは運用の意思決定者

株式と投信の違いは運用の意思決定を誰に任せるかの違いだ、ということを先週お話しました。

<先週のまとめ>
株式 − 自分でどの銘柄に投資するか最終判断する
投資信託(インデックス) − 市場とほぼ同じリターン(市場に任せる)投資信託(アクティブ) − ファンドマネージャー(代理人)に任せる
となります。さて、どの方法を選ぶのが良いのでしょうか。

投資信託(インデックス)はどんな時も市場の平均点を実現するファンドです。プロゴルフで言えば、イーグルやバーディーを連発することもないが、ダブルボギーも叩かない、優勝はしないがいつも上位にいる安定したプレーヤーといった感じでしょうか。

それに対し、株式投資や投資信託(アクティブ)はインデックスファンドよりリターンが高かったり下回ったりします。運用の世界でもタイガーウッズのような実績を出せれば良いのでしょうが、「投資の世界のタイガーウッズ」がどこにいるかどうしたら探しだせるのでしょうか。まず、投資信託のアクティブ運用から見ていきましょう。

● アクティブ運用にも様々な手法があります

アクティブ運用がインデックスを上回るリターンを上げるということは(偶然でなければ)市場が非効率(情報に歪みがある)であるということです。効率的であれば自分しか知らない特別な情報は得られなくなり、市場を上回るリターンが実現できないからです。つまり、アクティブ運用の有効性を問うことは、市場が効率的であるか、を問うことでもあります。

効率的な市場では、自分しか知らないと思っていた情報でも一瞬にして市場全体に広がり、その情報が株価に反映し、情報の価値はなくなります。そのような状況では、人を出し抜くことはできません。

では人が知らない(あるいは気づかない)情報はどのようにして得られるのでしょうか。アクティブファンドの運用を見ると、ファンダメンタルズ分析やシステム運用といった手法によって価値のある情報を見つけようとします。
ファンダメンタルズ分析とはアナリストなどが経済や個別企業を分析して投資対象を選び出す方法です。経済成長率、インフレ、金利、為替といったマクロ経済の動向から投資を決定するトップ・ダウンと呼ばれる方法と、個別の企業の財務データや経営者の資質、事業の将来性などを分析して有望な企業を選び投資を行う、ボトム・アップに大きく分けられます。

システム運用とは、ファンドマネジャーなどの主観ではなく投資モデルなどにもとづいて運用ルールを構築し設定するものです。例えば、資産配分モデルを構築し、割安な市場に資産を配分する、投資指標に基づいて銘柄を選び投資を行う、といった方法です。

● アクティブ運用はインデックスに勝てるのでしょうか

さて、アクティブファンドの実際の成績はどうなのでしょうか。米国の例になりますが、チャールズ・エリスの「敗者のゲーム」(日本経済新聞社刊)によると、例えば1996年には81%の米国株式投信がS&P500インデックスを下回る運用成績であったとしています。一方でフィデリティのマゼランファンドのように長期にわたってインデックスを上回る実績を持つアクティブファンドも存在します。

アクティブ運用はインデックスに勝てるのか、という最初の質問に回答するなら「勝つファンドは存在する、ただしその比率は想像しているより少ない。」ということになるでしょう。

● 株式投資でインデックスを上回るリターンは実現できるのでしょうか
今度は自分で銘柄選択をして株式投資をすることを考えてみましょう。自分で銘柄を選択してインデックスを上回るリターンを実現するためにはアクティブ運用同様、人が知らない情報を元に投資をしないと良い結果は得られません。そのようなことは情報は果たして得られるのでしょうか。

株式の世界には多くのプロがいます。朝から晩まで企業を訪問し、経営者に話を聞き、経営データを分析して株式の評価をするアナリスト。短期的な売買で利益を積み上げるトレーダー。マクロ経済など相場全体の方向性を分析するエコノミスト。インターネットの普及により、プロと個人投資家の情報格差が縮まったとは言え、彼らが大量の時間とコストをかけて収集分析している情報に個人が対抗できるのでしょうか。

もちろん米国の著名な投資家ウォーレン・バフェットのように少数の企業に集中投資し、超長期で保有することでインデックスを大きく上回るパフォーマンスをあげている例もあります。しかしバフェットの場合、個人というにはあまりに状況が異なります。

実際、そのバフェットも個人投資家には、インデックスファンドに投資することをすすめています。誰もがバフェットになれるわけではないのです。

● それぞれの考え方がありますが、私なら・・・

アクティブ運用や株式の銘柄選択が有効かどうか(つまり市場が非効率かどうか)は、専門家の間でも様々な議論があり、残念ながら完全な結論は出ていません。だからこそそれぞれの運用手法が存在するともいえます。

個人的には株式、インデックスファンド、アクティブファンド、すべてを使って投資をしています。株式は国際競争力があると言われるグローバル企業や成長性の高い小売業などを数銘柄。インデックスファンドはノーロードのものを。アクティブファンドは運用会社の哲学やトラックレコードを見ながら選択しています。インデックスファンドは積立てて残高が100万円程度になれば、ETFに乗り換えていきます。

3つの運用方法に分散するのは、それぞれに魅力があり、どれが良いのか判断できないから、です。インデックスファンドは市場全体への投資という位置付け。アクティブファンドや個別株式はインデックス運用を補完するものと考えています。

運用金額にもよりますが、これから投資を始める人は、最初はインデックスファンドで少しずつ資産を積立て、ある程度経験を積んだらアクティブファンド、あるいは株式投資を始めてはいかがでしょうか。株式の銘柄分散ができない場合は、ミニ株を使うことも検討しましょう。

それにしても、もし市場が非効率で、誰にも知られていない相場を予測する情報を発見したら、皆さんならどうしますか?世界のどこかに、そんな情報を知っていて密かに資産を運用している人がいるのかもしれない、とふと思うことがあります。

(マネックス証券 資産設計部 内藤忍)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こんなこと知りたい、これを書いて欲しい・・・
feedback@monex.co.jp  「資産設計部」宛にお寄せください。

マネックスからのご留意事項

「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧