J−REIT(不動産投資信託)は買い?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

J−REIT(不動産投資信託)は買い?

J−REITをご存知ですか?東証には現在、日本ビルファンド投資法人投資証券(銘柄コード8951)など5本のJ−REITが上場されています。日本版REITとも言われる不動産投信ですが、個人の投資対象としてこの商品、どうなのでしょうか。

● 今までの不動産投資は・・・
個人投資家の不動産投資というと今まではワンルームマンションなどが対象でした。投資金額が数百万円以上と大きく、1つの物件だけの投資、しかも売却するときの流動性が低い、など個人が投資対象にするにはハードルの高いものでした。J−REITの登場によって、50万円前後から専門家が選別した不動産物件に分散投資が可能になり、しかも上場しているので基本的にいつでも売買できます(流動性があるということ)。

● 商品内容はどんなもの?
上場するREITは、ファンドの運用資産の75%以上が不動産などで、かつファンドの運用資産全体の50%以上が賃料収入の発生している安定した不動産などになっています。

また配当可能利益の90%超を配当することで法人税が免除されます。税制面で優遇措置を受けるため、利益の大半が配当金となります。国内市場が低金利の現状では、相対的に高い配当率が期待できます。例えば、日本ビルファンド投資法人の直近の分配金は1万9,026円で、年換算利回りは決算発表日終値(51万3,000円)で計算すると6.07%となかなか魅力的です。
● 個人投資家に投資判断可能でしょうか?
不動産投信の問題点として上げられているのは投資情報の不足と利益相反です。
まず投資情報に関しては、目論見書などの資料を見ても投資判断が難しいという問題があります。目論見書には物件の詳細な情報が開示されていますが、組入れている不動産の質(築年が浅く、長期優良テナント案件が優良)や空室率についての見通しなどの評価には専門的な知識が必要です。情報があったとしても分析ができなければ投資の判断はできません。

もう一点は利益相反の可能性です。投資法人は自ら資産運用を行わず、資産運用は運用会社が行うことになります。運用会社の株主となっている不動産会社も不動産を保有し、管理事業などを行っていることから、J−REITの事業と競合します。その結果、J−REITの投資家に不利益がもたらされる懸念です。防止策として法令やしくみが工夫されていますが、投資家や市場による監視も重要となります。

どちらの問題もアナリスト、格付機関といった中立的な立場で評価を行なう組織が投資の判断を行うことのできるしっかりとした情報を提供し、投資家が活用できるようにすることが解決策となります。

● 分散投資になるのでしょうか?
資産設計の観点からは、不動産投資を株式、投資信託への投資と合わせることで分散投資として効果があるのでしょうか。

例えば、都心のオフィスビルの空室率はテナント契約の更新のタイミングから景気に対して遅行性があると言われています。また現在は低金利が続いていますが、金利上昇時にはファンド内の借入コストが上昇しリターンが下がる可能性があります。株・債券といった金融商品とは異なる価格変動が予想されることから分散投資効果が期待できます。

● では、投資すべきなのでしょうか?
商品としての魅力は投資対象である不動産市場への見通しによるといえます。賃貸市場動向、金利動向などから判断をすることになります。空室率の上昇、金利上昇などはファンドの投資リターンを下げることになります。

不動産へ投資、という選択をする場合、比較的小さな金額で投資ができ、流動性がある商品としてはJ−REITに並ぶ商品はありません。一方、これらのメリットの裏返しとしてJ−REITには他の不動産投資に比べプレミアムがついている可能性もあります。また税金などの違いも確認する必要があります。
投資の最終判断は自己責任ですが、資産の一部を不動産に振り向けたいという方には購入対象になりうる商品と言えます。ただし、50万円前後を不動産に投資するわけですから資産が最低でも数百万円はないと分散投資にはなりません。さらに小口化されればもっと投資家層が広がることでしょう。

マネックス証券でももちろんJ−REITが購入可能です。株式取引の画面から株式と同じ手数料でお取引できます。ETF、J−REITなど新しい商品も積極的に研究し、資産設計を進めましょう。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

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