賃貸と持家、あなたはどっち?(1)

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

賃貸と持家、あなたはどっち?(1)

私の周りにいる友人は家は賃貸派がほとんどで、持ち家の人はあまりいません。しかし最近、都心のマンションなどを購入しようと考える人が結構増えてきました。

家を買うとなると通常はローンを組んで借金、一方賃貸派はその分資金を運用することになります。家を買うか、借りるかは、住宅にお金を使うか、投資や貯蓄にお金を回すかの選択の問題とも言えます。いずれにしても住宅購入は子供育てと並ぶ人生最大の出費であり、資産設計に大きく影響します。賃貸と持ち家の間で揺れ動いているとき、どうしたら良いのでしょうか?

● 不動産購入は判断が難しい
不動産は高額な買い物であり、ナンピン買いができないもの。投資であれば値段が下がれば買い増して平均コストを下げられます(これがナンピン買い)が、不動産は一発勝負が普通です。そのタイミングを誤ると後から取り返すのはなかなか難しい。そして資産でもあり、実際に住んで活用するものでもあるから普通の投資とはまた違った視点が必要です。不動産は投資という単なるお金の計算だけでは決まらないものです。

● リスクを考えれば賃貸有利
まず経済合理性から考えましょう。結論から言うと持ち家より賃貸有利というのが私の考えです。住宅を購入すると賃貸生活には無かった3つのリスクが発生するからです。

(1)流動性リスク
流動性リスクとは自分の資金が必要な時に自由にならないリスクです。不動産は売却したい時に買い手がいなければ売却不可能です。株式のように取引所があるわけでもなく、投信のように基準価額もありません。また車のように業者が買い取ることもほとんどありません。人気のない地域や、人気のない間取りの物件ではこの流動性リスクはさらに高まります。

さらに不動産は取引にコストがかかります。手数料は片道3%、税金、登記費用、引越し、内装費用など購入価格の最低でも8%程度は必要と言われています。また新築物件は購入した時点で10%程度は価値が下がってしまいます。
不動産を購入すると住環境の悪化やライフスタイルが変わったというときに、引越したりする機動性が犠牲になってしまいます。(賃貸に回すという方法もありますが、ローンの残高が膨らんでしまいますね。)

(2)ローン返済リスク
通常住宅購入はローンを組んで購入します。ローン返済リスクには2つの側面があります。借り入れ金利の上昇リスクと返済原資の減少リスクです。金利上昇リスクは固定金利で借り入れを行うことで防止できますが、目先の金利は変動の方が低く、どちらで借りるかは悩ましい選択です。固定金利ローンの金利には金利上昇に対する保険料が含まれている考えればよいのかもしれません。
また収入に関しては返済原資の減少を考える必要があります。給与の引き下げによって返済金額は変わらなくても、ローン返済比率(収入に対するローン返済金額の比率)が高まるリスクです。

(3)実物資産投資リスク
住宅は建物の価値が使用と共に低下します。土地についても地価の動向次第ですが、国内では一部の例外を除き地価の下落傾向が続いています。地価動向は将来どうなるかわかりませんが、建物の価値が低下していくのは避けられないことです。また地震などの天災によるリスクも考えなければなりません。
資金が固定され、ローンの返済も不確定、資産価値の下落リスクもある。持ち家を購入するのは同時にリスクも抱えることになるのは事実です。

● 現在の経済情勢も賃貸有利
もちろんインフレになって不動産の価格が上昇すれば、ローンを借りて持ち家を買った方が有利です。家賃も上昇しますし、ローンの持ち家に対する比率は低くなります。高度成長期の日本ではとにかく借金をして家を買った方が良い、と言われましたが、まさにこのような状態であったからです。

しかし現在は状況が異なります。経済の低成長とデフレが続いています。さらに、地域差はありますが、日本はいよいよ人口減少時代を迎えます。不動産の需給に対し借り手、買い手が有利な状況になります。当面不動産価格が反騰する可能性は低いと言えます。

つまり価格上昇を期待して不動産を買うのはやめた方が良いということです。
ここまで書いているとなんだか家を買う気が失せてきますが、では、ここまで賃貸が有利であるにも関わらず「なぜ」家を買う人が増えているのでしょうか。
この続きはまた来週金曜日に・・・。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

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