人気の毎月分配型ファンドってどうなの?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

人気の毎月分配型ファンドってどうなの?

毎月分配型のファンドが最近人気のようです。外国債券に投資をして金利収入を分配するファンドです。国内で残高が1兆円を超えた商品もあります。今回はこの商品を取り上げてみます。

● 毎月分配型といってもいろいろある
毎月分配型のファンドにもパターンがあります。

1.運用する通貨による違い
ドル建(主に米国)の債券に投資するもの、ユーロ建てが対象のもの、そしていくつかの通貨に投資をするもの(名前に「グローバル」と入っているものが多い)、などがあります。

2.運用する債券による違い
いわゆるソブリン(国債、政府機関債など、中央政府等により発行・保証された債券)と呼ばれる信用力の高い債券に投資するファンド、ハイ・イールドと言われる格付が低くハイリスクハイリターンの債券に投資するものなどあります。

3.ファンドの国籍による違い
大きく分けて国内投信と外国(籍)投信の2つがあります。税金の取扱い、購入時の通貨などが異なります。

● 投資信託の税金 〜 ファンドが値上がりした場合、値下がりした場合ここでは国内設定の商品を1万円の基準価額で購入した場合を考えてみます。
<例1:1万円が2万円になった場合>
毎月の分配金に対して20%の税金が源泉徴収されます。1000円分配金が支払われた場合手取りは800円となります(普通分配金)。分配金ではなく1000円解約した場合は値上がり分について課税です。つまり500円に対して20%ですから、手取りは900円です。

<例2:1万円が5千円になった場合>
買付時の価額より下がっているので、分配金に税金はかかりません。
1000円分配されると手取りは1000円です。ただし基準価額は4000円に下がります。

毎月分配型に当てはめてみると、値上がりしている時に分配金が支払われると税金20%がかかり、自分で解約するより手取りが少なくなる。逆に値下がりしている時は税金はかからないが、ファンド価額はさらに低下してしまう、ということになります。

● 毎月分配型のリスク
主に外国債券に投資している毎月分配型ファンドでは為替リスクと金利リスクがあります。円高になると円換算の資産の評価額が減少します。また金利が上昇する時、債券の価格は下落しますのでこちらもマイナス要因となります。
通常のファンドでは価額が下がると分配金の支払いを見送りますが、毎月分配型では、商品設計上、基準価額が下がっても分配金を支払います。つまり、円高や金利上昇によって円換算の元本が減少するような状況では元本が分配金として流出する可能性があります。

● 毎月分配型ファンドのチェックポイント
毎月分配といっても運用によってリターンが産み出されなければ、元本を取り崩すことになってしまいます。つまり運用の内容を確認しなければならないのは普通の投資信託と同じです。基準価額が1万円を大きく下回っていても毎月分配を続けている商品は意外に多いものです。

次に販売手数料や信託報酬を確認してみましょう。例えば販売手数料が2%で年間の信託報酬が1.5%、といったファンドでは債券の金利が4%程度だと販売手数料を除いても年間2.5%の金利収入になってしまいます。これでは少し円高になっただけで元本は減ってしまいます。しかも販売手数料もあり、リターンはその分さらに低下します。商品内容は異なりますが、バンガードのウェルズリーインカムファンドなどと手数料を比較してみて下さい。

ハイイールド債券などを組入れリターンを狙うファンドもありますが、信用リスク問題が発生した時には、リターンが大きなマイナスになる可能性もあります。個人的にはハイイールドなどによる信用リスクによって高いリターンを狙うのはお奨めできません。

● そもそものファンド購入の目的は?
繰り返しになりますが、為替や金利によって元本の変動リスクが大きな商品なのに安定的な毎月の分配を目指す、という方針では、元本を分配せざるを得なくなり、実質的にファンドの一部解約をするのと同じになってしまう恐れがあります。年金のように毎月ある程度決まった金額を受け取れる、というのが売れている理由です(資産を自分で取り崩すのが嫌な人にとっては、ファンドが代行してくれるので気分的に楽なのかもしれません。)。しかし、資産を積み上げていく、という目的には向かない商品と思います。

買付時に販売手数料を払って元本が分配金として支払われるのでは分配金に手数料がかかっているのと同じことです。それでも毎月お金が入金されるファンドというのは魅力的なのでしょうか。

マネックスでは毎月分配型の商品は販売していません。最大の理由はお客様からのニーズが低いということ。中国株ファンドやユーロMMF、ヨーロッパの株式ファンドなど多くのリクエストを頂いていますが、毎月分配型商品へのリクエストはほとんどありません。世の中一般の投資家とは一味違う投資スタンスを持っているようです。

今回の話のまとめ−−−−−
毎月分配型の商品は人気。でもいろいろなバリエーションがある
元本の変動リスクが大きいのに安定的な毎月分配を目指すと元本にしわ寄せ資産を積み上げようという個人投資家には向かない商品

ではまた来週・・・。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

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