2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
マネックス証券に寄せられる御要望の中で商品ラインアップについて希望が多いのが、中国株とユーロMMFの2つです。
中国株などの外国株式を取扱うネット証券会社が増えています。マネックス証券では海外の個別株式は取扱いを行っておりません。今回はその理由を説明したいと思います。
●リスクが高いのが理由ではない
まず、外国株式のリスクに関して確認しておきましょう。
日本人から見ると外国株式には2つのリスクがあります。株価変動によるリスクと為替によるリスクです。円高と株安が同時に起こるような場合、為替損と株価下落による損の2つが複合されることになります。しかし、リスクが高くてもリターンが期待できるのであれば、取扱いを行わない理由にはなりません。
●外国株式の超過リターン
2つのリスクのうち、考えなければいけないのは株式への投資方法です。個人投資家が株式によるリターンを得る方法として大きく3つがあります。
1.市場全体に投資をするインデックス運用(ファンドを利用)
2.専門家に運用をさせるアクティブ運用(ファンドを利用)
3.自分で銘柄を選ぶ個別株式投資(株式投資)
です。
インデックス運用は市場全体(正確には対象とするTOPIXなどの指数)を忠実に追随することを目指しす運用です。市場全体が上昇しなければリターンには結びつきません。
アクティブ運用は運用の専門家であるファンドマネージャーが銘柄選択を行いリターンを追求します。リターンはファンドマネージャーの能力次第です。
外国株式を自分で選ぶ個別株式投資で行うべきかどうかはインデックス運用、アクティブ運用より高いリターンが期待できるどうか、によると言えます。つまり市場、あるいは運用専門家を上回る株式投資の能力があるか、です。情報収集、分析、判断能力、などが他の投資家を上回ることできるのでしょうか。
●市場を上回るリターンを得るには?
具体的に考えてみましょう。
日本の個人投資家が中国株式投資を行う場合、優位性はどこにあるのでしょうか。現地語で発信されるニュース、現地の政治経済の動向、など日本から入手できる情報には限界があると思います。英語や日本語に翻訳された2次情報は1次情報に比べスピード、正確性で劣ります。さらに会計制度の違い、法律、文化、なども異なります。
これらのハンディを持ちながら、競争相手を上回る実績が出せるのでしょうか。競争相手とは、現地で激烈な競争をしている運用の専門家や現地の個人投資家などです。残念ながら、私はほぼ不可能だと考えます。
つまり中国株式投資を日本の個人投資家が行う場合、個別株投資は成功の確率が低い、ということです。しかし市場の情報効率性が他の市場に比べ低いと言われる中国株ではアクティブ運用によって市場平均を上回るリターンを実現できる可能性が高いと言えます。そのためには運用能力に優れていると思われる投資信託を使った投資が最適です。
●良いファンドとは?
では中国株に投資する良いファンドの条件は何でしょうか?3つあげるとすれば運用担当者の資質、運用体制、トラックレコード、です。
運用担当者は最も重要です。現地の情報に精通し、投資判断に影響する重要なニュースを入手、分析、判断できることが必要です。中国語が話せる、といったレベルではなく情報ネットワークなども持っている現地人のファンドマネージャーがベストです。
運用体制も重要です。ファンドマネージャーの個人的資質に頼り過ぎると、辞めてしまった場合、運用の一貫性が維持できなくなります。個人の資質を組織として高めている運用会社が理想ですが意外に少ないものです。
そして今までの運用実績も確認する必要があります。過去の実績が将来を保証するわけではありませんが、こちらの確認も必要です。
●投資対象としての中国
中国市場は今後長期的に成長が期待でき、資産の一部は投資をすべき市場です。しかし投資を行うのであれば短期的な変動を狙うのではなく長期投資でじっくりとすべきです。焦って投資をはじめても今年の中国株相場を見れば明らかなように良い結果が出るとは限りません。慌てる必要はありません。
マネックスでは中国株式ファンドについては1年以上前から導入を検討し、具体的な商品の検討を行っています。販売するからにはきちんとした商品を提供したい、と考えるからです。限られた選択肢から良いファンドを見極めるのは難しいですが、もうしばらくお待ちください。
今回の話のまとめ−−−−−
中国市場は今後長期的に成長が期待でき、資産の一部は投資をすべき
個人投資家が中国株式投資を行うなら個別銘柄よりファンドが良い
時間をかけて良いファンドを選択することが重要
ではまた来週・・・。
(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)
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