「金」は資産設計の対象に加えるべきか

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

「金」は資産設計の対象に加えるべきか

国際情勢の緊迫化などを理由に金の価格が上昇をしてきています。低金利、株安、で株式や預貯金以外の投資対象を探している人も多いと思います。個人的には今まで、様々な投資を行ってきましたが、金は投資経験がありません。資産設計をしていく上で、金(Gold)を組み入れた方が良いのでしょうか?
● 実物資産であることの利点
金の株式や債券との違いは金が実物資産であるということです。つまり金自体に資産としての価値が認められているということ。株式や債券(時には預金)は投資対象先が破綻すれば紙くずになるリスク(信用リスク)を持っていますが、金にはそのようなリスクはありません。

希少性、持ち運びが容易、小口化、換金が容易といった利点もあります。今までに採掘された金は全部で約14万トンといわれていますが、これはオリンピックプールの3杯分。今後採掘される可能性もありますが、希少性と多くの人に認められた価値があります。ビンテージワインや絵画などの美術品にも希少性はありますが、持ち運び、小口化、換金性といった点で金にはアドバンテージがあります。

● 金の価格 
金は実物資産なので需給の影響を大きく受けます。また欧州を中心とした中央銀行の準備資産としても利用されており、保有者の動向によっても影響を受けます。

ロンドン、チューリッヒなどの金取引ではドル建での価格で取引がなされています。かつてのソ連がアフガニスタンに侵攻した1980年には850ドルの高値をつけました。最近価格が上昇してきてはいますが、300ドル台の半ばと高値に比べれば半分程度の水準です。

日本の投資家の場合、ドルベースの金価格に為替の影響が加わります。円安になれば円の金価格は上昇することになります。

●元本保証ではない、金利はつかない
金は逃避先としての安全資産、とはよく言われることですが、実際には価格変動も大きく、元本の保証ももちろんありません。また金利もつかないので価格の変動による値上がりしかリターンを得ることはできません。

では金の価格は上昇を続けるのでしょうか。もちろん相場が決めることですから将来の価格はわかりません。ただし金は地下に埋蔵されている実物資産であり採掘のコストがかかります。金の価格が上昇すれば、今までコスト的に見合わなかった埋蔵されている金も市場に出ることになります。

希少性がある金ですが、価格が上昇を続ける限界があることは認識しておくべきです。

●代替・補完資産としての金
言うまでもありませんが、金が資産設計の主役になることはありません。他の資産の補完をする形で金を保有することに意味があるかを考えることになります。

株や債券などと相関性が必ずしも高くない、ことから分散投資の対象としての魅力は考えられます。しかし、円での投資は為替による影響を受けること、保有しているだけでは金利、配当などはつかないこと、などを考えれば、必ずしも保有する必要は無いと個人的には考えます。

金の保有が本当に必要になるのは資本主義が機能しなくなり株式、債券といっ商品が無くなってしまうような状態です。そのような可能性はゼロとは言いませんが、結論としては資産設計の観点からは金はこれからも保有する必要はない、と思っています。そして自分の資産に金を入れる予定は今のところありません。皆さんはどう考えますか。

今回の話のまとめ−−−−−
金は実物資産で株や債券とは異なり信用リスクがないなどメリットがある最近価格が上昇しているが、金利・配当といったリターンはない
資産設計のポートフォリオには入れる必要は必ずしもない

ではまた来週・・・。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

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