エンハンスト・インデックスとは?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

エンハンスト・インデックスとは?

最近ある運用会社の方からエンハンスト・インデックスという新しい運用手法について話を聞く機会がありました。エンハンスト(enhanced)とは「強化する」といった意味ですが、「強化されたインデックス」とはどういうものなのでしょうか。まずは運用方法についてのおさらいから。

●株式の運用は大きく2つに分かれる
株式の運用手法は大きく2つに分かれます。アクティブとインデックスです。アクティブ運用はファンドマネージャーが銘柄選択を行い市場の平均(例えば日経平均やTOPIX)を上回ることを目標にします。

一方のインデックス運用は市場の平均を表す日経平均などのインデックスに連動した運用成果を目指すものです。投資信託やETF(上場投信)などで運用手法に採用されています。

●「勝者のゲーム」から「敗者のゲーム」へ
株式運用の世界では特定の人が投資判断に役立つ情報を持っていたり、情報の伝達に時間がかかったりする場合(市場が非効率である、と言います)、その格差が運用の成果に大きな差となってあらわれます。

しかし、企業の公平なディスクロージャー(情報公開)、インターネットの普及による情報の迅速な伝達、などによってその格差は小さくなっていきます。かつて機関投資家しか知らなかった情報でも個人投資家が入手できるようになれば「市場が効率化」します。

市場が効率化すると運用は「勝者のゲーム」から「敗者のゲーム」へ変わる、と言われます。ミスをした人が勝手に負ける世界です。テニスの試合に例えれば、豪快なサーブやスマッシュでスター選手が試合を決める「勝者のゲーム」から、初心者同士の試合のようにエラーで敗者が勝手に自滅していく「敗者のゲーム」になるということです。

●アクティブ運用の問題
「敗者のゲーム」になれば、スター選手であるファンドマネージャーの優位性は薄れます。むしろミスをしない確実なプレー(つまりインデックス)をしていれば他の運用者が勝手にミス(間違えた銘柄選択)をしてくれるから、です。市場が効率的(情報の均一性が高まる)になればなるほどこの傾向が高まります。

●インデックス運用の問題
インデックスファンドは市場への連動を唯一の目的としています。市場平均に近いリターンは得られますが、運用コスト分は常に下回ります。また、インデックスの中に、値下がりすると確信を持てる銘柄があってもはずすことはできません。インデックス運用はインデックスというご主人に忠実についていく忠犬ハチ公のような存在です。

●エンハンスト・インデックスは2つのいいとこ取り
インデックスに追随しながらインデックスを上回る運用を行う、2つをミックスしたのがエンハンスト・インデックスです。

エンハンスト・インデックスはテニスの選手で例えれば、確実なプレーでボールを相手に返し、たまにやってくる大きなチャンスのときだけスマッシュで点数を稼ぐような方法です。たまにやってくるチャンス、をどうやって見つけるかが「エンハンス」できるかの勝負になります。

例えばインデックスと同じ銘柄構成にして、倒産の可能性のある銘柄だけを取り除いた運用を考えます。実際に予想通りにその銘柄が倒産すればインデックスを上回る運用成果をもたらします。しかもリスクはインデックスファンドに類似しているので分散効果がありリスクはアクティブ運用に比べると小さくなります。

この場合インデックスに組入れられている銘柄から倒産する銘柄を選ぶスキルがポイントということです。

●エンハンスト・インデックスは逆転の発想
日本においてもエンハンスト・インデックス・ファンドの販売がはじまりました。米国では既にファンドの残高が30兆円以上といわれていますが、日本でまだ知名度は低くこれから徐々に増えていくことになると思います。また「エンハンス」する手法についての評価は運用実績を見て判断していく必要があります。

ファンドを買わなくてもエンハンスト・インデックスによる運用から学べることはあります。例えばA社の株はインデックスに組入れられているが、買いたくない(あるいはショートしたい)という場合、インデックスファンドを購入してA社株をショート(売り)するということが考えられます。

値上がりしそうな銘柄を買うという考え方から値下がりすると思う銘柄を排除する、という逆転の発想がエンハンスト・インデックスのエッセンスです。
今回の話のまとめ−−−−−
アクティブ、インデックス、どちらの運用にも長所・短所がある
エンハンスト・インデックスは両方のいいとこ取りを目指す
インデックスを上回るかどうかは「エンハンス」の手法次第

ではまた来週・・・。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

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