インベストメントとトレーディング

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

インベストメントとトレーディング

7月の「マネックスまるごと勉強会」ではトレーダーだった人がトレーディングについて、ファンドマネージャーだった人がインベストメントについて話しました。10月開講の早稲田大学OCのこの講座ではファンドマネージャーだった人が自分で投資の判断ができるよう「インベストメント」を教えます。http://www.waseda.ac.jp/extension/lecture/2003aut/0905.html#310191−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

その80 インベストメントとトレーディング

資産運用にはインベストメントとトレーディングがある、と考えています。完全粋に分けることは無理かもしれませんが、資産運用をする時、運用目的が何かを明確にして、目的別に管理することは大切です。

例えば保有している株価が値下がりしたとき、インベストメントとトレーディングでは対応に違いがあるのでしょう?

● インベストメント(投資)とは?
インベストメントとは難しく言うと、「価値を生産する企業に対して資金を投入し、分散投資によってリスクをコントロールしながら資産運用を行うこと。」です。

株式や債券に投資された資金は企業の生産活動に使われ、利益を出すことが目的になります。その利益の一部が投資へのリターンとなるのです。投資という形で資本を出し、リスクを取った見返り、です。しかし、投資先が必ず事業に成功し利益を上げるとは限りません。そこで1つの企業に投資するのではなく複数の投資を組み合わせることでリスクを軽減するのです。

ファイナンス理論では異なる資産を組み合わせて資金を分散することでお互いのリスクを打ち消し、効率的にリスクを取った運用が実現されることが証明されています。

● 大切なのは銘柄選択より資産配分
インベストメントにおいて重要なのは銘柄選択や投資のタイミングではなく、資産配分(アセット・アロケーション)です。月曜日(7月28日)のマネックスメールによれば、バンガード社の調査では、年金運用の月次リターン差異の77%が、資産配分の違いによって説明できるとの結果だとしています。
つまり「どの銘柄を買うか」「いつ買えば儲かるか」を考えるより「株と債券の比率をどうするか」「外株や外債を資産の何%くらい組入れるか」を考えるべきである、ということです。

● トレーディングとは?
一方のトレーディングとは、「市場の歪みを利用して収益を上げようとする取引」です。例えば株式市場にすべての情報が伝わっていれば、株価はある均衡点にあるはずです。しかし実際には、業績発表や予想外の大きなニュースなどによって株価が上下する場合があります。そのようなタイミングをとらえ、買われすぎたものを売り、売られすぎたものを買う。これがトレーディングです。
短期の市場の歪みの修正過程では「価値の生産」はありません。つまりゼロサムゲーム(勝者と敗者の利益の合計はゼロ)ということになります。だからと言ってトレーディングの存在が否定されるものではありません。

● ファンドマネージャーとトレーダー
インベストメントとトレーディングの違いはファンドマネージャーとトレーダーの違いと言えばわかりやすいかもしれません。

ファンドマネージャーは投資信託や年金資金などを運用するのが仕事ですが、市場の歪みを見つけて短期の取引をするのが主目的ではなく、価値を生産する企業を見つけ出しインベストメントから収益を得ようと行動します。

トレーダーは先物市場などで市場の歪みや短期的な値動きのタイミングを見つけて売買を行い収益を積み重ねていくことを主目的に行動します。

個人投資家にもファンドマネージャー型とトレーダー型の投資が考えられると思いますが、2つの方法の違いを理解しておくことは重要です。

● 例えば保有している株式が値下がりしたら?
インベストメントであれば、個別銘柄の選択よりも資産配分が重要です。株式の価値が下がり株式への配分比率が下がれば、リバランスによって株式の比率を上げるかどうかを検討します。

トレーディングであれば下落率がロスカットの水準を越え市場の歪みについての当初の予想が間違っていた、という判断になれば一旦売却、でしょう。
つまり目的によって行動が異なるケースがありうるということです。

● お金+勇気+忍耐
個人投資家がトレーディングをすべきかどうかは議論があると思っていますが両方やるなら目的別に2つの運用を分別して管理するのが鉄則です。

短期で儲けようと思って上手くいかないと「長期投資」という言い訳をして塩漬けにしてしまう・・・。トレーディング目的で作ったポジションがマイナスになるとインベストメントポジションに振り替えてしまうのでは資産配分を考えた分散投資ができなくなってしまいます。

お金があれば誰でも資産運用ははじめられますが、成功するためには勇気と忍耐も必要です。

今回の話のまとめ−−−−−
資産運用にはインベストメントとトレーディングがある
個人投資家にもファンドマネージャー型とトレーダー型の運用が考えられる投資の目的を明確にし、分別管理することが大切

ではまた来週・・・。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

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