2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
もう夏も終わりそろそろ秋の準備です。投資の勉強をしたい、という人のために8回目のマネー運用講座はじまります。
http://www.waseda.ac.jp/extension/lecture/2003aut/0905.html#310191−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
澤上さんと林さん
最近、2人の人にお会いして、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析について考える機会がありました。
さわかみ投信の澤上社長とマーケットアナリストの林康史さん、です。澤上さんはさわかみ投資顧問時代からのお付き合いになりますが一貫したスタンスにブレがありません。林さんとお会いしたのは10年ぶりですが、この方も昔と変わらないスタンス。
2人とも信念があるというか頑固な人たちですが、この2人のマーケットへのアプローチ手法は異なります。
● テクニカル分析とファンダメンタルズ分析
林さんはテクニカル分析の第一人者です。マーケットで運用を行っているわけではありませんが、大学で研究を行いその成果を発表しています。テクニカル分析とはチャートを今後の予測に使う分析手法です。
(テクニカル分析については「株価が読めるチャート分析入門」(かんき出版)が入門本としておすすめです。)
一方さわかみ投信で運用を行う澤上さんは、500億円のファンドの運用責任者です。世界の景気・産業・企業分析と経済社会動向に対する先読みから投資を行います。個別企業の調査と景気変動というミクロとマクロの分析をベースに投資を考え長期運用を行っています。澤上さんの運用手法はファンダメンタルズ分析と言えるでしょう。
この2つの異なるアプローチ、どのように使い分けたら良いのでしょうか。
● テクニカル分析の有効性に対する疑問
テクニカル分析には非合理だ、という批判があります。例えば半値戻し、フィボナッチ数列、などを使う方法がありますが、なぜ「半値」なのか、フィボナッチなのかという理論的根拠はありません。
テクニカルアナリストのことをチャートを見る人という意味で「チャーチスト」と言いますが、こう揶揄されることがあります。
「チャーチストはみんな貧乏だ。」
過去の時間と価格だけからパターンを見出し将来の方向性と時間を見つけるのがテクニカル分析ですが、そのようなことは果たして可能なのでしょうか。
● ファンダメンタルズ分析の限界
一方のファンダメンタルズ分析も疑問があります。それは個人投資家が果たして個別の企業分析を自力でできるのか、という疑問です。企業の分析に必要な大量の情報を時間的なハンディのある個人投資家が分析しきれるのでしょうか。
中途半端なファンダメンタルズ分析は正しい銘柄選択にはつながらず、市場の平均を上回るリターンを実現できなければインデックス運用をした方が良い、ということになってしまいます。
● いいとこ取り
テクニカル分析とファンダメンタルズ分析、2つの分析手法はどちらを信じるか、といった排他的なものではなく補完関係にあるものと考えることができます。使えるものは使ってみるという柔軟な考え方をすることが重要なのではないでしょうか。
西洋医学と漢方のような関係、と考えればわかりやすいかもしれません。病気を治すという目的に役立つ方法であればどちらか一方だけではなくそれぞれのいい所を利用すれば良いのです。
実際、企業調査に基づき投資するファンダメンタルズ分析を行っている人でも過去の高値・安値は気にしたりして投資判断を行います。無意識にテクニカル分析を行っているのです。
またテクニカル分析で銘柄を選んでも会社の経営内容が良くないから投資をしない、といった判断をすればそれはファンダメンタルズ分析の要素が入ってきているわけです。
● 何が正しいか自分で判断する訓練を
マネックス証券が証券会社としてやるべきことはどちらの手法が正しいかを決めることではなく、多様な選択肢を提供することだと考えます。お客様のニーズがある手法を提供し、それを考えるための視点を提供できるようにしていきたいと思います。
澤上さんと林さん、アプローチの仕方は異なりますが、マネックスと共通しているのは個人投資家に真の運用を提供したいという理念を持って仕事をされているということです。今はマネックスとは直接の接点はありませんが、個人投資家の視点に立った仕事をしているお二人とご一緒できる機会があればと思っています。
今回の話のまとめ−−−−−
市場の分析にはテクニカル分析とファンダメンタルズ分析がある
どちらにも長所・短所がある
2つのいい所を使い分けることが大切
ではまた来週・・・。
(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)
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