個人投資家に銘柄選択は可能か(1)

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

個人投資家に銘柄選択は可能か(1)

先週は勉強会が水曜日1回、木曜日2回、金曜日は何と3回も開催されました。マネックスの勉強会は会場の設営、受付、司会(そしてたまに説明まで)をマーケティング担当の4人で分担しているので大忙しです。
来月の勉強会もただ今準備中。新しい勉強会の企画もありますのでもうしばらくお待ちください。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

個人投資家に銘柄選択は可能か(1)

前回のこのコラムでご紹介しましたが、先週の金曜日の夜、マネックス銘柄選択勉強会が開催されました。オリックス投信投資顧問の運用責任者の方による株式銘柄選択の方法の説明とマネックス画面からのデータを使った分析実例の説明を行いました。

株式投資を始めてしばらくすると、株式の個別の銘柄を選んで投資をして市場平均を上回るリターンを得られないか、と考え始めます。自分の知っている銘柄に自己判断で投資をして結果が出る。これこそ投資の醍醐味です。

個別銘柄投資をするのは「個人投資家が銘柄選択をしてプロの投資家あるいはインデックスファンドに勝てる」と思うからです(でなければ、インデックスファンドやアクティブ運用の投信を買えば良いからです)。果たしてそのようなことは可能なのでしょうか。

銘柄選択勉強会では銘柄選択に関する1つの手法として「複数の公開情報を加工することによって銘柄を選択するアプローチ」を紹介しました。今週来週の2回でこの手法を説明したいと思います。

● グロースよりバリュー
株式をバリュー株とグロース株に分類する考え方があります。分類の方法は様々なものがあり専門家の間では議論が続いているようですが、一般的にはPERやPBRが低い銘柄をバリュー、高い銘柄をグロースとしています。
個人投資家として知っておきたいのは、過去のデータで見るとバリュー株式のリターンがグロース株を上回っているという結果が出ていることです。つまり高成長が期待され、PERやPBRが高い銘柄を選ぶより割安な銘柄を丹念に拾った方がリターンが実現できた、ということです。

今回の銘柄選択では、PER(さらにその他の収益指標)、PBR、配当利回り、などのデータを使って割安な銘柄をスクリーニングする手法を取っています。具体的には規準化とパラメーター調整を組み合わせます。

データ取得→規準化→パラメーター設定→総合得点算出→リスク銘柄除去

というのが手順となります。順番に説明していきましょう。

● 規準化とは?
規準化とは業界の平均から見てPER、PBRなどがどの程度割安・割高なのかを数値化することです。具体的には業界全体の平均値と標準偏差を使って個別の銘柄の規準化データを計算します(エクセルの関数を使えば簡単です)。
例えば電気機器のPER平均が30倍、標準偏差が15だとすると、PERが30倍の株式Aは規準化スコア0点、PERが45倍の株式Bは▲1点、といった具合です。テストの偏差値の考え方と同じです。

● 株価上昇率も規準化
PER、PBR、配当利回りといった財務指標だけではなく、株価についても過去の株価からの上昇率を計算し、同様に規準化します。業界平均の上昇率とその標準偏差を使って、上昇率が上がりすぎなのか出遅れているのかを見るわけです。

● パラメーターの設定
パラメーターの設定とは規準化されたデータのウエイト付けを行うことです。例えばPERを50%、PBRを50%のウエイトで計算する、と決めたら
総合得点=0.5*PERの規準化スコア+0.5*PBRの規準化スコア
のようにして総合得点を計算します。音楽のヒットチャートがカラオケ、着メロ、CD売上など複数のデータを点数化して総合ランキングを作っているのと同じです。

このパラメーターの数字(係数)をどのように設定するかは主観的な判断になります。正解があるわけではなく、その時点での一番良いと思われる組み合わせを考えることになります。

● 信用リスク
総合得点によってランキングが決まると、もう1つの手順があります。それがリスク銘柄除去、です。

今回のアプローチでは業績が低迷している銘柄(いわゆるボロ株)は投資対象から除外しています。予想外の良い情報によって株価の急騰の可能性がある反面、倒産リスクを持っていると考えるからです。具体的には株価が下位10%、3期連続無配、債務超過に該当する銘柄を対象からはずしました。

● 過去データで見ると・・・
さて、以上のようなプロセスで銘柄選択を行ったらどうなるのでしょうか。日経225銘柄を使って過去のデータで検証をしてみました(バックテストと言われます)。

2002年3月、2002年9月、2003年3月から2003年8月までのそれぞれの期間、総合得点上位10銘柄の上昇率の単純平均を計算すると、それぞれ+25.7%、+32.9%、+35.2%、となりました。同期間の日経225銘柄の上昇率は−6.2%、+10.2%、+29.7%ですからこれらの期間では「インデックスに勝った」ということになります。

● 市場は非効率か?
きちんと検証する必要がありますが、公開されているデータから継続的にインデックスを上回るリターンが実現できれば、日本の株式市場には情報がきちんと株価に反映していない「非効率性」がある、ということになります。

市場が非効率であれば銘柄選択によって市場平均を上回る超過リターンを得ることができるということになります。逆に非効率性がない、のであれば銘柄選択やアクティブファンドを使った運用はコストがかかるだけで意味がない、ということになります。

日本の株式市場に非効率性がどの程度存在するのか? − 難しい質問です。
● 銘柄選択の手法に正解はない
過去の実績を積み重ねても不確実な将来を確実にはできません。銘柄選択による投資には、市場は非効率か、という命題に加え、どの手法が良いかをどうやって判断すればよいか、という疑問がつきまといます。今回ご紹介している方法もあまたある銘柄選択手法の1つに過ぎません。

銘柄選択について来週もう少しくわしく続けたいと思います。

今回の話のまとめ−−−−−
プロの投資家、インデックスに勝てると思うなら銘柄選択投資を検討すべき銘柄選択の手法に正解はない
バリュー株をデータから割り出し銘柄選択する手法は効果を上げている

ではまた来週・・・。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

マネックスからのご留意事項

「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧