資産設計の本当の目標

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

資産設計の本当の目標

2002年のノーベル経済学賞を受賞したのはダニエル・カーネマンですが、受賞の理由となったプロスペクト理論は心理学的研究を経済学に導入した点が評価されました。投資判断とは本来合理的であるべきですが、実際には人間の心理が大きくかかわってきます。経済学にも心理的視点を考慮することが重要だということが認識されはじめた訳です。

今回はそんな人間の心理によって資産設計にも影響があることを書きたいと思います。「頑張ればできる」といった精神論は好きではありませんが、人間は合理的な動物ではないという認識は必要だと思っています。

●お金を殖やすのは本当の目標ではない
生保のテレビCMを見てよ〜く考えなくても、「お金は大事」なのはわかります。でも、資産設計の本当の目標はお金ではありません。大事なのは、お金によって何が実現できる、です。資産を1円でも殖やすことだけを考えて、むやみに節約したり、やりたいことを我慢したりすることは本当の資産設計とは言えません。人生の目的に合っているのか考える必要があります。

●ビジョンとミッション
そんな自分の本当の目的をじっくり見つめなおすために、ビジョンとミッションを考えることを提案したいと思います。ミッションとは人生における究極の目標。そして、そのミッション実現のための具体的な目標がビジョンとするものです。ミッションが夜空で目印にする北極星だとすればビジョンは地上のチェックポイントのようなものと言えば理解しやすいでしょうか。

●あなたの場合は?
究極の目標とは、例えば、自分の好きなことをして気ままに過ごす、とか家族と一緒に楽しい毎日を過ごす、といったことです。でも、これはいきなり考えろ、と言われても戸惑ってしまうでしょう。本当にやりたい理想をゆっくり考えていけば大丈夫です。

一方ビジョンはもう少し簡単です。簡単に言えばミッションを実現するために必要なことを「いつまでに何を」という形にリスト化することです。自分の夢や希望を思いつくまま考えてみましょう。可能か不可能か、というのは取り敢えず考える必要はありません。

●「いつまでに何を」→「いつまでにいくら」
ビジョンリストができたら、そのビジョンの実現のために必要なお金を考えます。海外旅行に行きたい、マイホームを購入したい、といったビジョンに対し、それぞれ「いつまでにいくら」という資産設計の数字を当てはめていくのです。

<例>
マンション 5年後までに頭金500万円 
海外旅行 3年後に50万円
・・・・
といった具合です。

●具体的にすることの重要性
ビジョンとミッションが具体化している人は資産設計のスケジュールも具体的になります。いつまでにいくら必要かがわかっているからです。しかもビジョンで自分のやりたいことがはっきりしていますから、資産設計もやる気が違います。

漠然と将来の不安を持っているより、夢を具体化するのにいつまでにいくらかかるのかを具体的な金額で考えてみる方が、精神衛生上もずっと健康的ですし毎日を前向きに考えることができます。

ビジョンとミッションがしっかりしていれば資産設計にも真剣に取り組めるのではないでしょうか。逆に何をするかの目的もなく資産設計しようとしても、目標が定まりませんし、具体的でないとやる気も起きません。

●一歩前に進む勇気を
せっかく見つけたビジョンとミッションは紙に書いておきましょう。それを時々(できれば毎日)眺めることで、何かが変わるきっかけになるかもしれません。効果が無くても失うものは無いですし、少なくとも気持ちが切り替えられるのは確かです。

今日の話が気になった人は読み終わったらすぐにまずビジョンとミッションを考えてみてください。そして出来れば何かに書き留めておいてください。いつかきっと役に立つことがあります。それは資産設計のためだけに留まらないと思います。

今回の話のまとめ---------
資産設計の本当の目標は実はお金ではない
ビジョンとミッションを考えてみよう
いつまでにいくらを具体的に考えてまずははじめてみよう

ではまた来週・・・。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

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