利食いと損切り

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

利食いと損切り

10月。これは株に手を出すには危険な月だ。そのほか危険な月は、7月と1月と9月と4月と11月と5月と3月と6月と2月と8月、それになんといっても12月だ。(マーク・トウェイン アメリカの小説家)
こんな人には投資は向いていません。
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利食いと損切り

不思議なことですが相場に関するこんな話をすると、同じような経験をしている人がたくさんいることに気が付きます。

(例1)購入した株が値下がりしたが、損切りをして実現損が出るのが嫌なのでそのまま塩漬けにしている。

(例2)外貨を買ったら円安になって利益が出たので、早速売却して利益を確定させた。するとそこから更に円安が進んで儲けそこなった。何だか悔しい。
トレーディング(短期の取引)では「利食いはゆっくり損切りは早く」が重要ですが、多くの個人投資家は逆になってしまっているようです。プロの投資家は1勝9敗でも利益を出し、素人は9勝1敗でも損失を被る、と言われるよう行動をなぜ取ってしまうのでしょうか。それを科学的に解明したのが2002年のノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの理論です。

●プロスペクト理論
経済学やファイナンスの世界では人間は合理的であることが前提になっていました。しかしダニエル・カーネマンのプロスペクト理論では合理的な人間が否定され、人は確率で合理的に行動しないことが説明されています。

プロスペクト理論を一言で説明するとこうなります。
「投資家は利益を受けるときはリスクを避けようとし、損失を被るときはリスクを取る傾向がある。」

●投資家は非合理的な感情で動く
この理論を説明するときによく使われる具体例で見てみましょう。2つの質問を考えてみてください。

Q1.AとBのどちらを選びますか?
A.必ず800万円もらえる
B.1000万円もらえるが15%の確率で0円になってしまう

Q2.CとDのどちらを選びますか?
C.必ず800万円支払う
D.1000万円支払うが15%の確率で支払わなくてもよい(0円)

合理的に期待値で考えるとBとDは850万円になりますから、もらえるケースのQ1ではB、支払うケースのQ2ではCを選ぶのが「正解」です。しかしQ1ではA、Q2ではDを選択する、という人も意外に多いのではないでしょうか。まさにプロスペクト理論の通りの感情に気がつくはずです。

●合理的に行動するためにどうすれば良いのか
感情的な行動によって「利食いは早く損切りはゆっくり」というやってはいけない状況が実現されてしまうわけです。だとすれば感情をコントロールする方法を考え実践することが利益を上げるために重要になります。

一番現実的な対応方法は事前にルールを決めて、それに従って行動するというのがでしょう。例えば取引をする前に、1割下がったら損切り、3割上がったら利食い、というようにルールを明確にします。そして利食いか損切りのポイントに達したら機械的にポジションを閉じる。

ルールを決めたら、もう少しだけ様子を見る、とか長期ポジションに切り替えといった言い訳をせずに淡々と実行できる意思が必要です。

●「マネーの心理学」を勉強しよう
投資で成功するには勉強することが絶対に必要です。偶然に上手くいくことがあっても長期には知識無しに勝つことはできません。

投資理論というと分散や相関を使った統計学的なアプローチが主体になりがちですが、投資の心理にスポットを当てた「マネーの心理学」も間違えないための知識として必須です。

マネックス証券でも勉強会を随時開催する予定ですのでご活用ください。http://www.monex.co.jp/visitor/shohin/benkyo/index.html
東京以外での開催要望が増えており、できる限り対応したいと思っています。
今回の話のまとめ---------
投資家は非合理的な感情で動く
合理的に行動するためにルールの設定と厳格な運用が必要
誤った投資をしないために「マネーの心理学」を学ぶことは必須

ではまた来週・・・。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

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