年初の予想からわかること

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

年初の予想からわかること

毎年年初の日経新聞には経営者、有識者の景気、株価の見通しが掲載されています。かつて、毎年正月にこの紙面を保存していた記憶があります。でも1年の間にどこかにいってしまい、結局その見通しがどうであったかの検証をしたことはありませんでした。

去年の1月3日にも恒例の予想が掲載されました。1年前の株価、有望銘柄、為替などの予想が実際にはどうだったのか。今回は去年の新聞記事を見ながら検証してみたいと思います(投信会社の方にご協力いただきました。)。
●株価の予想は?
早速紙面を見てみます。まず日経平均です。予想高値の平均が1万1410円。安値は7,818円でした。中には1万6000円の高値を12月につける、と予想した証券会社の社長さんもいました。ちなみに昨年の日経平均は安値が4月の7603.76円、高値が11月の11238.63円です。各人の予想にはバラツキがありますが、予想の平均はレンジとしては実際の相場の動きに近く、かなり実際の相場に近い予想だと思います。

●有望銘柄
具体的な有望銘柄も各人5つあげています。銘柄に点数をつけて予想を合計するとトヨタがダントツの有望銘柄1位になっていました。続いて、武田薬品、信越化学、ソニー、キヤノン、NTTドコモ、本田、花王、日産自動車、ローム、シャープ、といった順番です。大型優良株が選択される傾向があることがわかります。2002年末 → 2003年末の株価 はこうなっています。
トヨタ(7203)3190円 → 3620円
武田薬品(4502)4960円 → 4250円
信越化学(4063)3890円 → 4380円
ソニー(6758)4960円 → 3710円
キヤノン(7751)4470円 → 4990円
NTTドコモ(9437)219000円 → 243000円
ホンダ(7267)4390円 → 4760円
花王(4452)2605円 → 2180円
日産自動車(7201)926円 → 1224円
ローム(6963)15110円 → 12560円
シャープ(6753)1127円 → 1691円

同じ時期に日経平均は8578.95円から10676.64円に上昇しました。これと比較すると「有望銘柄」が必ずしも有望でないことがおわかりいただけると思います。

●為替
2003年年末のドル円相場についてはどうでしょうか。最も円高になると予想した人でも120円。平均は125.64となっていました。これは実際の為替レートとはかなりずれています。相場観が正しかった人は予想した人の中には残念ながら一人もいなかったことになります。

●予想を当てにして投資をすると・・・
昨年の株価や為替の予想結果から言えることは、予想は当たるものもあるし当たらないものもある、という当たり前のことです。日経新聞の年初の記事の場合、経営者などは期待感からか、自分の希望する方向にどうしても予想のバイアスがかかることもあると思います。

●実力なのかまぐれなのか
多くの人が予想をすれば、その中には当たる人がいるのかもしれません。しかし去年予想を当てた人が今年も当てるのかどうかは見極める必要があります。
例えば去年宝くじで3億円当てた人は宝くじを当てる能力があると言えるでしょうか。多分言えないと思います。では去年も今年も宝くじで3億円当たった人がいたらどうでしょうか。単なる偶然にしてはあり得ないこと、と思う人もいるでしょう。その人が買った宝くじ売り場を探して同じ場所で買おうとする人が来年出てくるかもしれません。しかし来年3回連続で3億円が当たることは恐らくないでしょう。

●役に立たないわけでもない
では、このような予想の数字を見ることは意味の無いことなのでしょうか。そうでも無いと思います。分析結果を鵜呑みにして投資をするのではなく、市場参加者がどう考えているのかを知るために使うのです。例えば為替であれば、ほとんどの予想が円高方向を予想しておらず、緩やかな円安を予想(希望?)していたことがわかります。

●長期の予想は難しい
専門家であれ素人であれ長期の予想を当てるのは困難です。時間が経つにつれ前提としているマクロ経済、市場環境などが予想できない方向に変わってしまう可能性が高くなるからです。さらに天災や戦乱などイベントリスクもあり、これらをすべて織り込んで考えることは不可能だからです。

長期の予想をあれこれ考えるよりは保有資産のリスク管理をしっかりすることの方が資産設計上は大事だ、というのが私の結論です。

今回の話のまとめ---------
予想記事を鵜呑みにして投資をしてはいけない
予想の数字は市場参加者がどう考えているかを知るための情報にはなる
長期の予想はイベントリスクもあり当てるのは難しい

いつまで続くかわからないこのコーナー。本年もよろしくお願いいたします。ではまた来週・・・。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

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