世の中にうまい話はあるのか(2)

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

世の中にうまい話はあるのか(2)

信用取引や為替保証金取引はレバレッジ効果によって効率的にリスクが取れる反面リスクが大きいという話をしました。
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/004679.html

その一方レバレッジ取引だという認識をしないでやっているレバレッジ取引もあります。

●無意識にやっているレバレッジ取引
ローンを組んでマイホームを買うこと。これもレバレッジ取引です。マネックスFXの保証金に当たるのがローンの頭金と考えれば、頭金が購入金額の10%ならレバレッジ10倍ということになります。10分の1の金額で取引(購入)ができる取引で、資金使途が不動産(マイホーム)なのか為替なのかだけの違いです。

しかしローンを組んで家を買う人には信用取引やマネックスFXをはじめる時のようなリスクに対する意識が無いのはナゼでしょうか。その理由は橘玲氏がマネックスメールで指摘したように、持ち家を買うのは投資ではなくローンを払い終われば不動産が手に入る貯金であると思っている人が多いから、ではないでしょうか。
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/003307.html

●レバレッジ取引のリスクとリターン
いずれにせよレバレッジを使った取引は効率的に資金を使えるという利点がある一方で投資先の変動による資産価値への影響が大きくなるということです。これは為替保証金でも信用取引でもローンを組んでの不動産取得でもレバレッジ取引に共通の特徴です。

不動産の場合、価格は株や為替のように短期で大きく変動しないので変動率という意味でのリスクは小さいかもしれません。しかし不動産には別のリスクがあります。

例えば、先週ご紹介した毎月15万円の手取りをマンションの賃貸で得る投資の場合、空室になるリスク、家賃より管理費+ローン返済額がローン返済期間中に大きくなってしまうリスク、途中で売却することになれば価格リスク、買い手が見つからない流動性リスクなど様々なリスクによってリターンを得ています。

●世の中うまく出来ている=うまい話はない
こう見てくると、世の中のほとんどの金融商品はリスクとリターンが見合っていることがわかります。ハイリターンでローリスクなものはありません。つまりリターンを求めるのであれば何らかのリスクを取らないといけないという当たり前のことです。

リスクとリターンをマトリックスでまとめるとこうなります。
(1)ハイリスク・ハイリターン リスクを認識して投資を考える商品
(2)ローリスク・ローリターン リスクを取らなければリターンはない(3)ハイリスク・ローリターン こんな商品買ってはいけません
(4)ローリスク・ハイリターン こんな商品は普通存在しません

(1)から(4)の中では(1)(2)以外の選択はありえないわけですが、リスクを伴う投資を行う際、リスクについて自分で納得し、それがリターンの期待に見合うものであるかを考えることを果たしてどの位の人がやっているでしょうか。

●リスクをリターンに結び付けられる人
人が気がつかないようなリスクを発見し、効率的にリスクを取れる人は同じリスク商品に投資をしていても、「目利き」によってリターンに結びつけることができます。一般の人には見分けられないリスクを発見し、自分の投資判断に活かすことができるのがプロです。

不動産の専門家であれば、一般の人が手を出さない物件でも購入して収益物件に仕上げられるでしょうし、ファンドマネージャーのような株のプロは一般の人が気がつかない会社の価値を人より先に見つけてリターンをあげるのです。(できなければいずれクビなってしまいます)

ハイリスク・ハイリターンの投資を行おうという人は自分の投資判断に「目利き」としての価値があるか考えてみましょう。もし自分に「目利き」の能力が無い、と思ったなら別の投資方法を考えなければリスクを取る価値はなくなってしまいます。

今回の話のまとめ---------
●無意識にやっているレバレッジ取引がある
●効率的な市場ではリスクとリターンは見合っておりうまい話はない
●リスクをリターンに結びつける方法を真面目に考えよう

ではまた来週・・・。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

※マネックスFXは、外国為替保証金取引です。外国為替相場や金利動向によって、利益を得られることもありますが、損失を被る場合もあります。預託された保証金の元本は保証されません。また投資者保護基金による補償対象とはならず、証券取引法等で定められている分別保管の対象ではありません。
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