物理学とテクニカル分析

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

物理学とテクニカル分析

東京のオフィスから片道1時間半。茨城県の土浦まで人に会いに行ってきました。お会いしたのは個人投資家のMさんです。国立大学の物理学の教授をされていた方で、退官後60歳から自分のお金で投資をはじめた方です。投資に関する著書も数冊出しています。名前を言えば知っている方も多いと思います。
テクニカル分析と物理学。この2つのつながりがどこにあるか興味を持ってお話を伺いました。

● 「市場は効率的ではない」
まず、一番聞きたかったことを質問してみました。

「株式市場は効率的だと思いますか?」

彼はきっぱりと言いました。

「少なくとも日本の株式市場は効率的ではない。」

つまり日本株では過去のデータを元に将来の投資判断をするテクニカル分析によって収益をあげられると考えているということ。しかも実際にテクニカル分析を自分で研究し、それを自己資金の投資で実践しているということです。
● 長期投資は短期トレードよりリスクが高い
さらに、長期投資は短期トレードよりリスクが高い、といいます。長期投資で株式保有をしているとその期間ずっと投資先の倒産リスクを取ることになってしまう。短期で銘柄を選んで売買すればそのようなリスクは小さい、という考え方です。

● 全ての取引に勝つ必要はない
といっても絶対に勝てるテクニカル分析の手法を使っているわけではありません。うまくいかない時、損失を出してしまうときもあると言います。またテクニカル分析以外の判断材料も使っているようです。

全ての取引で勝てないのであれば重要になるのは、確率の低い取引を無理にしない、ということと1つの取引で大きな損失を出さない、ということです。彼は毎日日中は株の動きをパソコンで見ていますが、取引はやらない日も多いと言います。「休むも相場」を実践するのは簡単そうでなかなかできないこと。そして取引前に利食いと損切りを決めて「ロボットになって」取引をしているようです。これも出来そうで出来ないことです。

● なぜテクニカル分析は信用できないのか
テクニカル分析を主体に取引している彼もテクニカル分析を語るだけの「チャーチスト」たちには批判的です。

その理由は2つあります。1つはテクニカル分析の多くはその時に都合の良いようにチャートを使い分けており、現実的には役に立たないということ。そしてもう1つは「チャーチスト」の人たちは予想を語るだけで、実際に自己資金で自分のテクニカル分析を使っていない場合が多いということです。

テクニカル分析で著名な方がこう言ったのを聞いて驚いたと言います。
「そろそろ人に話してばかりでなく実際に自分で投資をやってみないといかんなあ」
こんなチャーチストの言うことを信じて投資して勝てるのでしょうか。

● テクニカル分析でお金持ちになる方法
2002年5月17日のこのコラムに書いたように、テクニカル分析でお金持ちになる方法は、実際に投資をすることではなく、テクニカル分析の本を書いて売ることだと思っていました。
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/cat_19.html

しかし次のような条件に当てはまるテクニカル分析をしている人の話は聞いてみる価値があるのではないか、と考えはじめました。

1.毎日相場を見て自分のお金で投資で実践して結果を出していること
2.テクニカル分析が万能であるとは言っていないこと
3.分析手法が論理的で誰でも学べる「科学的」なものであること

● 勉強して、自分で判断する
土浦で2時間お話を聞いた後、マネックスのメンバーの方向けに勉強会をお願いしました。テクニカル分析を使い自己資金で相場に向っている人のお話をじっくり聴いてみたいと思います。まだ具体的なスケジュールは決まっていませんが、マネックスメンバーの方にはホームページなどでご案内できると思います。勉強会の最新情報はこちらからご覧下さい。
http://www.monex.co.jp/visitor/shohin/benkyo/index.html

テクニカル分析は役に立つのか。これは自分で判断するしかありません。ただはっきりしていることはいずれの投資手法でも絶対に儲かる方法は存在しないと言うことです。

今回の話のまとめ---------
●投資は評論家の話ではなく自己資金でリスクを取っている人の話を聞こう●その場合実績だけではなく、論理的に明快であるかをチェックしよう
●絶対に儲かる方法はいずれにしても存在しない

ではまた来週・・・。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

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