インフレになるときの投資商品

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

インフレになるときの投資商品

日本のデフレはまだ終焉していないものの、数年前に比べれば雰囲気が変わってきています。日銀ホームページには日銀総裁の4月24日の会見内容として次のようなコメントが掲載されています。
http://www.boj.or.jp/press/04/press_f.htm

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物価全体のトレンドとしては、やはり日本経済が着実に良い方向に進んでいるなかで、既に企業物価の段階では、わずかに物価が上昇し始めている。その一方で、消費者物価指数の段階では、表面の指数の前年比上昇率はほぼゼロという状況が続いており、「消費者物価指数が安定的にゼロ%以上」という今の金融緩和政策の目標としている状況が実現するまでには、まだ必ずしも先行きの道程は容易でないという話をしました。
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物価が上昇に転じる、つまりインフレになったとき、どんな運用をすれば良いのか。今回は物価連動債を取り上げます。

●物価連動国債とは
イギリス、アメリカなどでは国債の1種類として物価連動国債というものがあります。これは物価の動きに合わせて元本や利払い(金利)が変動する債券です。物価連動債は長期的にインフレによる資産の目減りを防ぎたい年金資金などの運用として最適であり、実際に年金資産の運用対象として組み入れられています。

●日本の物価連動債
日本には今まで物価連動債はありませんでしたが、今年の3月に第一回が発行されました(998億円)。財務省によれば2004年度に合計で6000億円の発行が予定されています。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/bukkarendou/inflationindexed.htm
現在発行されているものは、満期は10年で、物価変動に合わせて、利払い額と元本額が増減するようになっています。連動する物価は全国消費者物価指数(CPI、除く生鮮食品)です。

例えば、このCPI(物価)が3%上昇すると元本が3%増加、逆に3%下がれば元本が3%減ることになります。インフレになった時にその分元本が増えて実質の手取りが減らないようにできるわけです。

●日本では個人投資家は買えない
残念ながら、税制の問題から、日本国が発行する物価連動債券は銀行、保険、年金、投信、などの機関投資家のみが購入できます。現状では、個人であれば物価連動国債に投資する投信が対象となります。米英においては、個人向け物価連動国債が発行されており、どの程度のニーズがあるのか、流動性はあるのか、といったチェックを経て、個人への販売を財務省が検討することが期待されます。

●インフレになるときの投資商品
インフレになると予想した時、どんな金融商品を保有するのが有利でしょうか。一般に思い浮かぶのは不動産、株、金(Gold)といった商品ではないかと思います。

しかし不動産は土地の需給にも影響されますし、地震リスクなど別の要因もあります。株式についても個別銘柄によってリターンが大きく変わります。インフレになってもすべての銘柄が上昇するとは限りません。金などの貴金属についても商品市場それぞれの固有の需給要因が絡みます。

物価連動債であれば一定のクーポン(金利)があり、もしインフレになればその分元本も増加することになり、インフレに直接的に対応した運用ができることになります。

●消費税引上げはCPIを押し上げる
過去の日本の消費者物価の上昇局面を調べてみると、前年比で上昇している要因として石油ショックによるインフレと消費税導入・改定による2つがあります。石油ショックはともかく消費税については今後上がることはあっても下がることはないでしょう。

日本の消費税率は現在5%ですが、先進国の中では最も低い水準であり、消費税が将来上昇すれば物価連動債の元本も増加することになります。

●これから思考実験しておくべきなのは円安とインフレ
株式や不動産を購入すれば値下がりのリスクがあることは誰でも認識していると思います。資産価額の下落は自分の資産を減らすことになります。

しかし個人投資家の資産運用の目的が「実質的な購買力の維持・向上」であるということを考えれば、資産の値下がりと同時に考えておくべきなのは、円安そしてインフレです。

物価連動債は地味な商品ですが、将来もし買えるようになったら自分の資産にどの位組み入れるか、思考実験してみてください。資産設計の新しいヒントがうまれてくると思います。

今回の話のまとめ---------
●個人投資家は実質的な購買力の維持・向上を考えるべき
●資産の値下がり、円安、インフレの3つが最悪のシナリオ
●インフレになったら何に投資するか、今から思考実験しておこう

ではまた来週・・・。

(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)

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