2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
4月に紹介した「サボテン投資法」の分析には過去19年間のアセットクラス別のデータを使いました。アセットクラスとは例えば日本株、外国債券といった資産を大まかに分類したグループのことです。
サボテン投資法とは?
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/004798.html
●アセットクラスそれぞれのインデックス
アセットクラスにはそれぞれに対応したインデックス(指標)が存在します。例えば日本株であれば日経平均が有名ですが、プロの世界ではTOPIX(東証株価指数)がインデックスとして使われています。
TOPIX(東証株価指数)とは?
http://www.tse.or.jp/topix/topixs/index.html
それ以外のアセットクラスでもそれぞれ代表的なインデックスがあり、それらのデータを使えば、個別の銘柄ではなく例えば日本株と外国株は全体的にどちらが値上がりしたか、といったアセットクラス間の比較をすることができます。
では1984年12月のTOPIXを100とすると2003年12月にはどのくらいになっていたでしょうか。
●日本株は儲からない?
1984年12月から19年間のそれぞれのインデックスの数字を計算してみるとこのような結果になりました。
日本株 114.27
日本債券 267.45
外国株 270.79
外国債券 258.57
短期金利 165.27
この期間のデータで見ると日本株(TOPIX)は100から114.27になりました。つまり19年間で日本株全体としては平均して15%足らずしか値上がりしなかったことになります。
一方短期金利で運用していたら約1.6倍。19年間では日本株より高い運用成果だったのも驚きですが、日本債券、外国株、外国債券のリターンがほぼ同じ水準であったというのも偶然とはいえ意外な結果です。
●投資の評価はリターンだけではない
ではほぼ同じリターンになった日本債券と外国株に投資をするのは同じこと、と考えてよいのでしょうか。リターンを比較するだけでなくリスクを見ると大きな違いがあります。
日本債券は債券ですから金利収入があり、金利が低下することで価格も上昇したことから、この19年間は安定的にリターンが上がってきました。一方外国株式であれば株価の変動と為替の変動によって大きくリターンは変動していますし、外国債券も為替の変動の影響を受けることになります。
●変動率
投資のリスクとは将来に対する不確実であり、そのリスクを計測する方法として標準偏差が使われます。これはリターンのブレがどのくらいあるかを示す数値です。この数値が高いほど、リターンのぶれが大きくリスクが高いということになります。計算は面倒ですが、エクセルなどの表計算ソフトには関数機能として標準偏差を計算する機能があります。
●効率よくリスクを取るのが最もよい
投資のリスクとリターンの関係では次のようなことが言えます。
同じリターンならリスクの小さい方がよい
同じリスクならリターンの大きい方がよい
つまり投資の評価にはリスクとリターンのバランスを見ることが重要なのです。それには「シャープ・レシオ」という指標が便利です。
シャープ・レシオとはリターン (分子) が、リスク (分母) に見合っているかを示し、この数値が大きいほど、リスクに対してリターンが大きかったということ、つまりリスクの取り方が効率的であったということになります。具体的な計算式では
シャープ・レシオ=(リターン−無リスク短期金利)/標準偏差
となります。
http://www.monex.co.jp/visitor/howto/hint/risk/kangaeyo/okisa_toshi.html
●リターンではなくシャープレシオで過去の実績を評価
投資信託の過去の実績としてよく「1年間で○○%上昇した」といったリターンに注目が集まりますが、リターン実現のためにどんなリスクがあったのかが実は重要です。
例えば中国株ファンドを選ぶ場合でも過去の実績としてリターンだけではなくシャープ・レシオもチェックした方が良いということです。マネックスの勉強会ではそんな個人投資家の視点からの情報提供を行っています。
http://www.monex.co.jp/visitor/shohin/benkyo/index.html
今回の話のまとめ---------
●過去19年間のアセットクラス別の騰落率では日本株のリターンは良くない●同じリターンであってもリスクが異なれば評価も異なるべきである
●過去の実績評価にはリターンだけではなくシャープレシオも確認しよう
ではまた来週・・・。
(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)
マネックスからのご留意事項
「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。