2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
「資産設計への道」は皆様の資産を殖やす方法を考え提案するコーナーですが、それだけでは不十分ではないか、と最近思っています。
人間は必要以上にお金があってもハッピーになれないからです。お金を殖やすことに時間を取られ、結局使うことができなければ不必要なお金ということになってしまい意味がありません。それなら収入を減らしてもお金を使う時間を殖やすことを考えた方が人生は豊かになるでしょう。
つまり
1.仕事をして収入を得るお金
2.持っているお金を投資して殖やすお金(いつものコラムのテーマ)
この2つの合計とそれを使うために必要な時間をバランスさせることを考えてみる必要があるのではないかということです。年収アップの方法はこのコラムでは学べませんが、人生の予定表について今回考えてみたいと思います。
●引退時の金融資産はいくらになっているか
まずシンプルに税金やコストを考えず具体例でお金がどのように殖えるのか、計算してみます(退職金や年金も考慮せず作成しました)。
現在、40歳のAさんは金融資産を1000万円持っています。年収は500万円で投資に回せるのが年間100万円(毎月8万円の投資)。そして今後金融資産は5%で運用できるとし、年収、運用利回り、は一定と仮定します。
金融資産は時間が長いほど働く期間が長くなり元本が増えること、運用期間が長くなり複利で運用できることから大きくなります。20年働いて60歳で引退の場合、15年働いて55歳で引退の場合をエクセル関数(FV)で計算してみるとこうなります。
<ケース1>60歳まで働く場合
手持ちの1000万円が20年5%で運用できると2,653万円
毎月8万円の投資を5%で20年続けると3,301万円
合わせると60歳の時に約6千万円の資産になります。
<ケース2>55歳まで働く場合
手持ちの1000万円が15年5%で運用できると2,078万円
毎月8万円の投資を5%で15年続けると2,147万円
合わせると55歳で4200万円の資産になります。
●お金を使うための時間
次に問題になるのは、殖えたお金を使う時間がどの位あるかです。これは自分が何歳まで生きているのかによって個人差があります。
厚生労働省のホームページには平均余命のデータがあります。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life01/
これを見ると40歳男性の平均余命は約40年。ですから平均的には80歳ということになります。これを使って計算します。
●毎年いくら使えるのか
毎年決まった金額を殖やした資産から引き出して引退後使っていくとします。引き続き資産は年間5%で運用できると仮定。それぞれのケースで使える金額をエクセルの関数(PMT)を使って計算してみました。
<ケース1>の60歳引退の場合であれば20年で元本6000万円ですから、5%で資産運用を続けながら取り崩しできるのは、年間450万円です。
<ケース2>の55歳引退の場合は25年で4200万円です。同様な考え方で年間280万円を取り崩せます。
少しイメージがわいてきたと思います。
●自分のケースで具体的に計算してみる
ここまでの計算はシンプルなモデルを前提にしているので、実際には条件が違うよ、という人がほとんどだと思います。例えばこんな場合です。
今は資産がほとんどない
これから毎月8万円積立てるのは無理
お金を年間5%で運用する自信がない
さらには、健康には自信があるのでもっと長生きしてしまいそう・・・
前提条件の変化で殖える資産金額、使えるお金は変わってきます。
●将来どんな生活をしているのか
それより考えるべきことは具体的な将来の生活イメージです。どこに住むのか、会社に行かないでどんな毎日を過ごすのか、家族との関係は、趣味にいくらかかるのかといったことを想像してみます。そんな生活に年間いくら必要なのでしょうか。具体的になればなるほど自分にとって最適の「時間とお金の関係」が見えてきます。
●「仕事が趣味」という人は
さてここまでの説明は「お金と時間は多いほどハッピー」を前提にしていす。もしAさんの生きがいが仕事だったらどうでしょう。仕事をできるだけ長く続けられることがハッピーということになってしまいます。
つまり今回の話のようなお金と時間のバランスを考える必要があるのは、引退後の人生でやりたいことがある人だけなのです。「仕事が趣味」という人には今回のコラムも残念ながらお役に立てません。
今回の話のまとめ---------
●引退時に金融資産がいくらくらいになるか自分の場合を計算してみよう●引退後の生活イメージをできるだけ具体的に想像してみよう
●仕事以外に人生でやりたいことを紙に書いてみよう
ではまた来週・・・。
(マネックス証券 資産設計部 内藤 忍)
マネックスからのご留意事項
「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。